きなこ

この世界の(さらにいくつもの)片隅にのきなこのレビュー・感想・評価

5.0
私たちは、浅はかだ。
あの人たちのように慎ましく、
強く生きたいけれど、それはかなり難しい。

なぜなら、経験していないから。
戦争の無い時代を生きているから。

そして、やっと、やっと気付く。

毎週訪問するおばあちゃま、
おじいちゃまが

孫の名前を忘れても
75年経っても、
あの日々を、毎回の様に語る理由を。


今日訪問したおじいちゃまが言っていた、

「自由は不自由だ、あの頃の我々には
懸命に生きる選択肢しかなかった」

ふとした会話から、昨日のように蘇るあの日。


おとぎ話でもなんでもなく、
体験したあの人たちの中では、
戦争は今も、
永遠に反芻されて治らないケロイドだ。

そして経験していない私たちはこれを観て
「悲しかった」「辛かった」
で終わらせては、ならない。


観終わった後に入ったコンビニ、
眩しくて、
いらないもんばっかだなあと、思った。

そして罪悪感たっぷりに
コーラを買うのだった。

人はそんなに変われない。
でもこの罪悪感が、小さな芽だといいな。


いらないもので溢れたこの時代が
懸命に生きた延長線上の産物ならば、
大切にしなきゃとも思う。


あとなんか独身でもいいかな、
と思っていたけど、
やっぱりダメだなあ、
繋いでいかなきゃなあ、
命を、
と まで思ってしまった。



前作を3回と、原作も読んで
覚えているはずなのに
やっぱり胸が痛くて、涙が止まらなかった。

またきっと忘れるから、
また何回も観ようと思う。

忘れられない映画が観れる、有難さを。
きなこ

きなこ