うなぎネコ

この世界の(さらにいくつもの)片隅にのうなぎネコのレビュー・感想・評価

4.6
ヒバクシャ3世です。
曽祖父は、今も「原爆ドーム」にいます。

***

日本にアカデミー賞があるなら(イヤミです)
アニメーションとかではなく
あらゆる賞を総獲りすべき作品ですよね。

『戦争映画』のエポックメイキング的作品として世界に誇れるし
義務教育でも、8/6に観せるべきやね。
あなたたちの多くは、戦争を指揮する側でも
戦争で儲ける側でもなく、こちら側にいると。

戦争モノは「ヒロイズム」や「残酷さ悲惨さ」に走りがちだけど
大事なのは、戦争の下には日常の生活があって
日常の生活の延長に、これからも戦争は起こしうる事。

「オオゴトじゃ思ってた頃が懐かしいわ」
「英霊なんて呼ばれるのは勘弁だ」
「戦争してても花は咲く、蝶は飛ぶ」
「戦争で人は死ぬ。戦争じゃなくても人は死ぬ」
すごいメッセージを、あんなヒラヒラと…

原作も素晴らしいのですが、
のんさんの声が入って、すずさんに血が流れた。
戦闘機の爆撃の様子(美しくもある)
腕と命を失うシーンの静寂。
映画ならではの演出。
徹底的な時代考証とイントネーションで、廣島が生きて殺されて
焼け野原から立ち直る街になった。
コトリンゴの音楽も、とてもいいよね…

「さらにいくつもの」になって、夫婦の話が深くなった。
30万人以上と言われる『被爆者』ひとりひとりに
生活や物語があった事を、さらに深く感じました。

何よりも、この作品は「日本アカデミー賞」界隈のしがらみとは無縁の
市民のファンディングで制作された映画、そしてほぼ口コミで広がった映画だという点もエポックメイキング。
うなぎネコ

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