無難

この世界の(さらにいくつもの)片隅にの無難のレビュー・感想・評価

4.2
さらにいくつものシーンが追加され、168分の長尺版になって帰ってきた。
すずさんが居場所を見つけていく過程がより丁寧に描かれていて、その努力を踏みにじる戦争の非情さが際立つ。

所在を求めて苦労するのはいつの時代も同じ。他者に認められて受け入れてもらおうとする営みこそが人生とも言える。それは非常時だろうがなんだろうが関係ない。
が、存在意義の優先順位が国家によって変えられると、それを得るための努力も、犠牲も、否定される。国が空気を作り、従う人が増えれば、まともな感覚でいることすら難しい。

いや、そんな高尚な話ではないのだ。
彼女が覚悟と主体性を持って生きるのは、異常な社会構造の片隅を生き延びるためではなく、純粋に、世界の中に居場所を見つけるためなのだから。

玉音放送後のすずさんの叫びが改変されていたのは少し残念だったけど、そのシーンを迎えるまでの丁寧な積み重ねのおかげで、前作とはまた違った刺さり方をした。
無難

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