名作がさらに完璧になって異次元の傑作となった。
前バージョンでは戦争の日常を俯瞰して捉えたような内容だった。しかし原作にあった女性達のパートを増やしたことで、実は戦時下に生きた女性達が何を犠牲にしてきたのかが浮き彫りとなってくる。
新たなパートは違和感なく本当に伝えたかった真理を補完し、完璧な起承転結を描いて帰結する。
本当にそこにいた人々、街、物、景色、全てが魂を持って存在している。
爆弾や戦闘機の数まで殆ど正確に描き、呉の港にある船の数、時間帯、日時、それらも正確に調べて描いたという片渕監督。
この作品を観た広島の人が、自分の祖父が描かれていたことに仰天したというエピソードが恐ろしい。
その執念と狂気が醸し出す異常なリアリティ。
本当にああいう家族が居て戦争に奪われ、そして生きて今我々が居ることを実感させてくれる。
だからこそ、この作品に出てくる女性達の立場や悔しさが心に刺さる。全ての人類、国家に観て欲しい。
最後、無くした手が繋ぐ新たな縁は今を生きる全ての人々への希望。75年経って人類は、この作品を生み出せた。
後は変わるだけ。それだけで良い。