黄金綺羅タイガー

映画 としまえんの黄金綺羅タイガーのレビュー・感想・評価

映画 としまえん(2019年製作の映画)
2.4
映画『としまえん』なるものがやっている事すら知らず、のうのうと生きていた僕にこの映画『としまえん』を見る機会を与えてくれたのは、稀代のクソ映画『貞子』である。
『貞子』を一緒に見た人たちと話すと、あれは撮影監督が悪かったのではないか、いや監督がやはり悪いなどといろんな意見があり、それらを聞いていて、なるほどなと思うところがあった。
一人家に帰り、その日話したことを回想しているうちに、僕は『貞子』がなにがどうしてああなったのかを検証したくなった。

それでいろいろ調べていくとちょうど『リング』のときの撮影監督の映画が上映されているではないか!
これは検証のために見なくてはと思い、観たのが『としまえん』であった。

映画『としまえん』を見るならばとユナイテッドシネマズとしまえんに馳せ参じる。

どうせアイドルとか旬の若手女優で客寄せして、それなりにホラーテイストのもの作ればいいと思って作った映画でしょ? と思ってに見に行った僕の期待値からすると、とても良くできていた。

たしかに細かいところをつつけばいろいろあるのだけれど、あの古い洋館の扉をノックした瞬間にすでに五人は呪いに巻き込まれていたのだと無理やりには納得できるかなと、思いつつ見ていくと特に大きな破綻もない。

それにこの映画全体からキチンと観客を怖がらせようとしている熱意を感じられて、とても好感が持てた。
役者の人たちもすごく演技が上手いと感じるシーケンスはないけれど、丁寧に演技をしていたと思う。
セオリー通りのストーリー展開に、セオリー通りの音の使い方、不安な心理を煽るカメラの手ブレ、視点を誘導するゆっくりしたパン。
そうそうこのアップでの撮り方は仄暗い水の底からだよなー、やら、そうそうこの民家の撮り方はリングだよなー、とか思って観ていた。

それにやはりホラーはねこだましだとしても、ビックリさせられる要素は欲しい。
そういう要求にもしっかりと応えてくれていた。
あと写真や錆びたドラム缶に刻まれた文字、不気味に感じるアトラクションの石像やキャラクターの顔など、こういうギミックを入れていくことは大事なのだと思う。
そして『としまえん』という密室での出来事。

ベタだなんだと言われようが、基礎はやはり大事なのだ。
『貞子』に足りなかったのは結局これだったような気がする。

『貞子』を見たあとだから全てが好感的に捉えられているのは、いいことなのか悪いことなのか。
ただ傑作や名作かと聞かれれば、そうではないしもう一度観たいと思うかといえば、そんなことはない。
良くあるアイドルをダシにしたホラー映画ですという感じではあるが、アイドルをダシにした映画の中でも割とキチンとした映画なのではなかろうかとも思う。