さなだまる

mid90s ミッドナインティーズのさなだまるのレビュー・感想・評価

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あの頃に目撃したモヤモヤと、何とも言えない感情が蘇る...

俺も中学の時、北海道の農道でスケボーをしていた。
道はガタガタだし、技を決めても誰も見る人はいない。
けど、それぐらいしかやることが見つからなかった。

その農道はうちの飼い犬の散歩ルートでもあった。
ある日、そこでアライグマと遭遇した。
まだ子犬だった飼い犬がアライグマと遊ぼうと近寄るのを抑えている時、農家のおじいちゃんが軽トラでやって来た。
おじいちゃんは俺らの前で停まり、何をするのかと思えば、いきなりアライグマを蹴り上げた。
こいつはこうしなきゃダメなんだぜ、と農家のおじいちゃんは無邪気な笑顔を俺に向けた。
俺と犬はひたすら立ち竦んでいた。
何度も宙に舞うアライグマを呆然と見つめながら、俺は世界の残酷さを知った。

おじいちゃんが去った後、恐る恐る前を横切ると、アライグマは突っ伏したまま動かなくなっていた。
が、眼は真っ直ぐに俺を見据えていた。
最近、俺もあの眼に近付いている気がする。
そう、世界を憎む眼だ。
さなだまる

さなだまる