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mid90s ミッドナインティーズのhoshのレビュー・感想・評価

3.5
90年代アメリカの不良スケーターたちの青春映画。淡い青春映画のトーンだが、男らしさの檻の話だ。時代設定にこだわった映像はA24らしい。

不良たちみなそれぞれにどん底の苦悩があるのだが、それを共有したり、共感したりすることは無い。本音を隠して、イキって、マウントと暴力をして、女性をトロフィーにして。主人公スティーヴィーは幼いから、その世界がまぶしく見えてしまう。その気持ちもわからなくはないのだが。
そんなコミュニティに属しているからこそ、理知的に他者と接するリーダー、レイの懐の深さと思慮深さには救われたし、彼とスケボーするシーンは最高だった。(鳴り響くモリッシー!)彼と会話するシーンはきちんと同一画角に人物が収まっていたのも印象的。

ここ最近見た、『aftersun』『はちどり』『カモンカモン』『あのこは貴族』そのどれもが男性は心の弱さをどう発露するのか、声を上げるのか、という問題意識と、社会の作った男らしさの規範から外れると復帰できなくなるのではないかという不安から声を出せないという苦悩を感じる。

本作も、男性コミュニティの言葉なしでその場のノリや積み重ねた時間で醸成されるマイメン感という美点と、それが行き過ぎてマウントの取り合いや本音を殺してしまうという欠点の両方を描いていて、常に批判的な目線を忘れていなかった。よりよく居られるような男性像はなんなのか、自分も男性として悩むような映画だった。
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