ゆず

mid90s ミッドナインティーズのゆずのレビュー・感想・評価

4.3
 映画のおもしろさって、人生の節目を振り返ったときに以前の自分は今とは全く違う場所にいると気づかせてくれること。そして、90年代に行くこともできる。数値化できる時間の塊のようなもの。スパイクジョーンズ。
 世間では中年とされる世代だけど、映画の世界では、偉大な監督、脚本家の多くは、30代から40代前半で本領を発揮している印象がある。若いエネルギーと円熟した経験と賢さ両方がある。90年代は男がファッションにすごく興味があると認めると、「男らしくない」と馬鹿にされた。

“自分をかたちづくる”という経験をした愛おしい時間っていうのは、12歳から14歳までの、スケートボードにハマっていた時期なんだ。とくにその頃は、周囲の人たち、仲間にどうやったら受け入れてもらえるのかを模索していた時期だったから。

ガス・ヴァン・サント監督の『エレファント』(2003)。とくにフレーミングが素晴らしい。フレームが固定されていて、人物たちがそこを出たり入ったりしながら、そのなかでいろんなことが起きていく。「追う」というよりも「(そこに)ある」ということを意識した。スケートボードを撮っている映画で「ダッセえ!」と思うのが、ボードの下から撮ったりして、ちょっと“エクストリームな感じ”の画を出しすぎているもの。だけど、今回もっとも大事にしたのは「静」の美しさなんだ。スケーターたちがフレームに出たり入ったりするなかで、彼らが「存在している」ように見えるようアプローチした。

16ミリ
「あるがままでしかいることができない」という誠実な人が演技をしようと思った時に“いい演技”が生まれる。

シェーン・メドウズの『THIS IS ENGLAND』(2006)、アルフォンソ・キュアロンの『天国の口、終りの楽園。』(2001)

 90年代を再現するために一番拘ったのは、ゴミ。1995年と2020年のゴミは全然違う。思春期の男の子たち、特にサブカルチャーの中に身を置いていた子たちはとても繊細だけど、驚くほど感情表現が下手で、集団に溶け込むことをひどく恐れている。本作ではその感情をどうしても描きたかった。でも、劇中の彼らのセリフはとても未熟だから、観ている人に正確に伝わるかどうか、誤解されてしまうのではないか心配はあった。彼らのつたないセリフの裏に隠されているのは、「俺たちは苦しんでいるんだ。傷ついてヒリヒリしているんだ」という副音声なんだ。

 脚本を完成させるまでに、20回も草稿を書き直した。ドナルド・クローヴァーのTVシリーズ「アトランタ」と「セッション」を観たときに動き出した。

 この映画は当時望んでいたものが詰まってるファンタジー。年上のレイとスティーヴィーが話し合うシーンなんか特に、13歳のときに誰かがこう言ってくれていたら! と想像していたもの。子どもたちが脆弱であってもいいと感じられることは、世の中のためにも素晴らしいことだと思う。
世界中の誰もがスケートボーダーをカッコいいと思うのは、自分らしさを持っているから。でたらめや嘘のない文化。スケートボーダーに演技をさせた場合、彼らは真実を話すだろうし、演技に社会集団が持つ特徴的な習慣がないところが素晴らしい。

ラッパー・Nas。『ビーバス・アンド・バットヘッド』。スケートで友達ができ、美的センスや倫理観が養われた。本作はそのお返しのラブレター。『ザ・ソース・マガジン』。飲む容器の大きさ。

立ちション。子どもに、タバコ吸わせたりキスさせたり大丈夫なんか?
ゆず

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