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太陽は動かないのdaisukeookaのレビュー・感想・評価

太陽は動かない(2020年製作の映画)
3.9
原作未読。日本人主人公で世界アクションやりたい!という願望を「MOZU」よりさらにスピーディにエンタメに振り切って仕上げてきた。

冒頭から・窓ぶち破って突入・頭で洗い場シンク割る・コンロの炎に相手の敵の顔を押し付ける・ぶら下がって飛び降りたらゴミトラックの荷台、という「あるあるアクション」の連打。この映画はそれを通じて「アクション基礎体力」の高さを観客に向かって宣言担保している。

個人的には、現在のライバルと機密を奪い合う肉弾戦と、少年期に組織と関わりあう回想をカットバックさせるホンが、良くも悪くも気になった。「その手があったか」という感じ。人によっては「テンポ落ちる」と感じるかもしれないが、ともすれば凡庸になりがちな「高所での奪い合い」を見応えあるシーンに仕上げていると思えた。
アクションが全体的に「重くて速くて痛い」のが良い。そして、ちょっと前の007にありがちだった「何でもメカで解決」が無いのも良い。

けど「えーっとそれどうやって辿り着いた?」という雑さも何シーンかあって、危機を切り抜けるのが格闘と体力だけ(つまり知恵を使う場面がほぼない)という単調さもあって、中ボスが囚われたエージェントを虐める「あるある」もあって。

主人公2人の日本人エージェントに絡むライバル1人美女1人のエージェントについては、どうにかねじ伏せて描きぬいたという感じだろうか。こういう世界は、目的も利益も敵味方も瞬時に入れ替わる面白さがある。しかし「ややこしさ」と「分かりにくさ」は違う。①分かりにくいまま登場人物たちに言葉で説明させる。②ややこしい様を語らずに動きで見せて観る側に分からせる。②で行きたかったけど時間切れで①、みたいな悔しさもにじみ出る出来だったような気がする。

かといって「面白くなかったか?」と聞かれれば「いや、面白かったよ」と素直に言える見応え。それは何より藤原竜也と竹内涼真の熱演だ。世界を股にかけても彼らの風貌は決して負けてない。

日本人が世界でどれだけ通用する?いや実はもうすでにかなり通用してる。という説を、架空の映画の中で描きつつ現実の中に立ち上げようとする大いなる挑戦。次があるなら、よりリアルな知略も込めてほしい。この作品だけじゃない。こんな作品を、もっとたくさん。

あとは…タイトルか…難しいな。
スパイものはヒーローものと同じように、タイトルを「名前」でキメたい。
ここ本当に難しい。
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