ノラネコの呑んで観るシネマ

ナイチンゲールのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

ナイチンゲール(2019年製作の映画)
4.6
重い・・・。
アボリジニとの戦争下のタスマニア島。
アイルランド人流刑囚の主人公は、権力を振りかざす英軍将校に夫の目の前で犯され、夫と娘を殺される。
生き残った彼女はアボリジニの男を雇い、北部の街へ向かった将校たちを追って、密林に分け入ってゆく。
話型は典型的な西部劇の復讐もので、「トゥルーグリッド」+「ブリムストーン」という感じなのだが、全編むせ返るような緑の地獄を彷徨う物語は「野火」を思い出した。
主人公は英国に支配されているアイルランド人で、更に女性で流刑囚という幾つもの閉塞を抱えている。
彼女のバディとなるアボリジニの男も、英国軍に部族ごと滅ぼされて天涯孤独の身。
最初は金で繋がったよそよそしい二人の関係は、お互いの中にある抑圧の歴史を知ることで、少しづつ変わってゆく。
しかしこの二人の物語に希望はないことは、最初から分かっている。
戦争の結果、タスマニアのアボリジニは絶滅したし、いかに理不尽であろうとも、流刑囚の女が英軍将校を殺せばただではすまない。
本作では人間の愚かな行いを、悠久の大自然と対比することで物語を落とし込む。
人間の世界で、誰にも支配されず生きることがいかに難しいか。
秀作である。
ブログ記事:
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