ナイチンゲールの作品情報・感想・評価・動画配信

上映館(12館)

「ナイチンゲール」に投稿された感想・評価

SNSで映画ブロガーの方々が絶賛していたので、鑑賞。

「レヴェナント」的な復讐追跡劇かと思っていたのですが、本作の敵は大自然ではなく"時代"でした。
黒人のガイドと、アイルランド人の女性と。復讐追走劇を繰り広げるには"時代"の壁はあまりにも厚く、差別が蔓延している中での追走は同時に逃走のような側面を持っている点が興味深かったです。

ヴェネツィアを射抜いたという受賞歴にも納得の、社会派で硬派な一面をも持った復讐ドラマでした。
らいち

らいちの感想・評価

5.0
痛みと怒りが全身を駆け巡る。あの瞬間にヒロインの怨念が自身の感情と同化する。
美しい島、タスマニアにも存在した暗黒の時代。開拓ではなく侵略によってもたらされたイギリスの植民地時代は、法治ではなく暴力で成された罪なる歴史だ。本作で描かれるような悲劇は当時そこらじゅうであったのではないか。そんなことに思いを馳せながらも、この映画の味わいは歴史ドラマにあらず。図らずして隷従の身になった1人のアイルランド人女性と、1人のアボリジニー青年。2人の運命が交錯し、壮絶な追走劇が展開する。
「憎しみからは何も生まれない」なんて言葉はしょせんは綺麗ゴト。残忍の極み、その所業で全てを失ったヒロインの激情は想像に余りある。法が機能しなければ、暴力は暴力で返すのみ。ところが本作の場合、その役割を肉体的に弱い女性に充てる。単純な復讐劇にはならない。どんな結末をたどるのか。ライブ感とも違う臨場感はとても得難いものだった。
監督は本作でも肉体と精神の両輪を丹念に描く。追い込んだと思えば、実は追い込まれている心理。肉体と精神は必ずしもシンクロしない。この人間を描くアプローチが素晴らしい。重厚なドラマに同居する凄惨なバイオレンス描写に「女性監督」という枕詞が馬鹿らしくなる。ひたすら抑圧することでしか他者と交われない将校と、理解し尊重が芽生え、確かな絆を築いていくヒロインたちの対比が効いてくる。2人の旅路に果てにある浜辺の朝焼けが、絶望の闇に刺す一筋の希望に映り胸に迫った。
すごい映画だった。なんせ恐怖の谷に突き落とされる。復讐に燃える女が自分の夫と赤ん坊を酷くも殺した男たちをタスマニアの森の中で追いかけて行く物語。

時は19世紀、オーストラリア、タスマニア島に故郷アイルランドから流刑された女が植民地支配をしているイギリス軍将校にいいように扱われる場面から始まる。

容姿と歌が美しいから(だからナイチンゲール?このタイトルまたまた邦題、安易な。。。とか思っていたが、原題も”The Nightingale”だった。)夫と赤ん坊は無残に殺され、後々ちょっとだけ会話で出るが、この女の生い立ちも悲惨だ。恐らく食べて行く為仕方なく食べ物を盗んだんだろう。孤児で誰にも保護されてなければ当然だ。その程度で流刑、その後タスマニアでこの酷い扱い。

【この後ネタバレあり】

何度もレイプされた挙句、夫と赤ん坊は無残に殺された。復讐の鬼となってタスマニアの森を次の町へ進んでいった将校の一軍を追いかける。このあたりはさしずめシュワルツネガーくらいの鉄の肉体と精神を持つ女戦士には見えた。道案内として先住民のアボリジニの黒人男性ビリーと途中で出会い、半ば強引に一緒に旅をする。このあたりから本映画が実は白人のアボリジニへの謝罪映画じゃないか?と方向チェンジしている。

白人がアボリジニをどれだけ残忍に殺したか。それまで平和に暮らしていたアボリジニ達は牛や馬以下の扱いで文化も伝統も当然無視され、イギリス人による殺戮に次ぐ殺戮をありのまま見せている。どの黒人も「ボーイ」と呼ばれ、名前はない(クレアは大分してからあなたの名前は?と聞きビリーだとわかるのだが)。地図もないから彼らの土地勘を頼るしかない。クレアも最初はビリーの話などまともに聞かなかったが次第にビリー部族の伝統や儀式を受け入れる様になる。ビリーはとってもいい感じの人で視聴者も皆好きになった事だろう。顔も人柄も、彼女を特に助けようとはしないところもいい、いや、味方でもなくむしろ敵だが、でも殺そうともしない。自分の身は自分で守れと突き放し、どんな場面でも的確な判断力でクレアに気付かせる賢い男だった。「英語が上手過ぎやないか!」とは心の中で突っ込んだけども。。if you had…, I would have...と仮定法さえ間違ってなかったのは変だったが。


最後に一番憎い将校を殺す段になり、何故か急に腰抜けみたいになったところはあの女戦士一体何故に?。。それ以外の下っ端は(自分の赤ちゃんを無残に殺した若い男)を見つけた時は目が爛爛と光り迷いなく何度もナイフで心臓を突き刺したというのに。この男は将校の命令のまま赤ちゃんに手をかけたが、彼も被害者で、受け身の殺人だったし、最後の息を引き取る時「お母さん」と言ったり。彼も人の子だったんだと気付かされる。いや、こんな下っ端殺してる場合じゃないぜ、将校をやっつけろ!って何度も思ったのに実際将校と対峙したら腰砕けになり、トラウマが蘇ったみたいに恐怖におののき、クレアの髪まで戦闘モードじゃなく下におろしたロングヘアーの弱い女の子になり、洋服も途中の小屋で食料と服を捕った時着替えたのがまるで修道女みたな首にレースのついた黒いドレスにになっちゃってた。

しかしそのままでは流石に終わらず、銃も持たずに将校の居る食堂へ勇ましく入って行き、言いたいことは言った「あんたっていったいどうしたの?お母さんに愛されなかったの?」は図星だった様でピンタを食らったが。この将校の心理描写もある程度は描いている。きれいなの赤いエリートの軍服を着てるが、心は腐った悪人であるのは間違いない。少年兵には最初の頃優しくしたり、勇気を試したり、心理ゲームを次々行い、怖気づいた姿を見た後はあっけなく殺すなど。こいつは明らかに子供の頃の成長過程で何かありクソに転落したのか。まぁそこはどうでも良い。

大事なのは、クレアがこいつを殺すこと。。なのに。。殺さなかったんだよ〜〜〜〜!!!!殺してくれるのをこれだけ心待ちにした映画もなかなかない!!!コロナで映画見てる人僅かでしたが、皆超落胆したのは周りの空気で分かった。

八つ裂きにしろおおおおお!心の中で叫んだのに。ああ悔しい。


しかしビリーの部族の伝統習慣としてはそのままにはしておかないんだな悪いやつのことは。。。

海岸で叫んでいたビリーの言葉もアボリジニの方々への謝罪なんだろうな。微妙に描き方がイギリス人はクソ、アイルランド人は犠牲者、そしてアボリジニは最大の犠牲者。ごめんなさい、あなた達の大事な島を奪い殺戮し。。今更言ってもしょうがないけど、というオーストラリア映画でした。
この10年で最も怖い映画のひとつ、傑作ホラー「ババドック」のジェニファー・ケント、待望していた新作。

夫と子供を目の前で殺され自身も凌辱された女性が、銃を片手に男たちに復讐するリベンジスリラー……というお馴染みのフォーマットかと思いきや、オーストラリアタスマニア開拓史の闇、アボリジニの物語を絡ませ、虐げられて生きる人々への哀悼の映画に昇華していた。力作。

女性監督「だから」「なのに」という考察自体が、ある種のミソジニーに絡め取られてしまっているのだ、と自分自身に言い聞かせたい。
物語のクライマックスに関しても、あの様な顛末へ持っていくのは、この物語の定型からすれば批判的、対照的。
安易な「女が男に復讐する物語」に矮小化する事のない幕引きに監督の意図がある様に思った。

「弱い者が夕ぐれ、更に弱い者を叩く」のではなく、連帯と共感を求め合う物語。
この映画も、今作られるべき、観るべき映画の間違いなくひとつだと思う。
復讐モノとしては今ひとつ煮えきらないが、その前段階として描かれる凌辱描写や殺人のシーンが昨今の映画にしては稀なほどしっかり描かれている点にはとても好感が持てた。最初は全く対極にいて敵視しあっていた2人が、真に相互理解へと至るラストを映像で森や月を印象付けておいてあの時間、場所に設定したのも上手く対比になっていて良い。
冒頭からテンサゲナイチンゲールダンス😭💦タスマニアデビルシット😈
junjuone

junjuoneの感想・評価

3.6
アイルランド人は清く正しく、アボリジニの黒人は聡明で思慮深く、イングランド人はクズであった。

これほど美形なヒロインにこれほどの悲劇が襲い掛かるといたたまれない。途中復讐へのモチベーションが一旦落ち着くあたりは映画としても凪の状態で中だるみしそうになるが、ちゃんと目的地に辿り着く。
道中でも出るわ出るわクソなイングランド人との遭遇。中には良い奴もいたりして、2人の絆の強まりを感じながらロードムービーとして楽しめる。
大鳥涙

大鳥涙の感想・評価

3.5
女流監督らしいストレートな表現満載で、ギリシャ神話のような復讐劇を描いた。プロットは面白いが、流石にキツイ時間が続いて疲れた。スタンダード画面が窮屈感を煽る。それが物語の閉塞感に繋がるのは理解できるものの、余裕がないなあ。
冗長な語り口、歌の繰り返し、もう少し短く出来たはず。また画面が暗すぎる。この監督はドッグウィルでトリアー監督の薫陶を受けている。トリアーが撮っていれば、全然違うものになったんだろうけど。
比較対象と思うピアノ・レッスンには、遠く及ばなかった。
samiam

samiamの感想・評価

3.0

このレビューはネタバレを含みます

観終わってちょっと複雑な心境になる映画だった。

生活苦からの窃盗で流刑され、山奥の駐屯地で働くアイルランド人の女性主人公は冒頭で悪役の英国軍中尉からレイプされ、更に翌日夫の前で中尉と部下からもレイプされた上に夫と赤ちゃんを殺される。主人公は殺されずに気絶させられる。本当に悲惨な出だしで当然主人公に同情する。

上官から素行の悪さを咎められ昇進の推薦を断られた悪役中尉は昇進を軍部に直訴するために、離れた街に滞在中の軍上層部に会いに、翌朝駐屯地から街に向け出発する。

気絶から目覚めた主人公は、復讐をするために現地人を案内人として雇い悪役中尉を追うというストーリー。💀

ここで問題なのが主人公の現地人案内人に対する態度。昨晩まで弱々しくも理性的であったキャラクターが一変して現地人を見下す強気な我儘女に豹変する。復讐に燃えるが故に自らを奮い立たせるのは理解できるが、現地人の扱いや現地人のアドバイスを無視する態度にイライラする。
また、恐れから赤ちゃんを殺した弱々しい部下を残虐に殺害したにも関わらず、いざ本命の悪役中尉を銃殺できるチャンスの時に、急に弱気になって逃げ出し、現地人案内人を危険に晒し、更にイライラが。。。

最終的には主人公もようやく現地人に心を許していいキャラクターになるのだが、このアップダウンがなんともはや。。。まあ、人間は自分の罪にはなかなか気付けない存在で複雑な心情があるということを表していて、主人公の成長譚なのかも知れないが。。。
現地人案内人はとてもいいキャラクター。彼には素直に感情移入できた。

アボリジニに関する映画、タスマニア島に関する映画を観たのは初めてだと思う。
というか、本作の舞台がタスマニア島で、現地人はアボリジニの人で、案内人が話していた言葉は本当のアボリジニの言語であることは、鈍い私は台詞から読み取ることは出来なかった。。。エンドロールを見て初めて知った次第。。。😅

主人公が唄う歌は素晴らしかった!♥️
たかし

たかしの感想・評価

3.7

このレビューはネタバレを含みます

赤ん坊と彼氏を殺されレイプされた女性の逆襲を描く。
白人の過ち。アボリジニの正義感。フェミニズム。
少女の物語はホラーそのもの。悪夢にうなされ、怒りに狂い、結末から少女は何を想うのか。
我々は何を考えるのか。女性と男性の視点からそれぞれみてどうなのか。
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