ティミー

ある画家の数奇な運命のティミーのレビュー・感想・評価

ある画家の数奇な運命(2018年製作の映画)
4.2
「ある画家の数奇な運命」を先週末に
鑑賞してきました。
上映時間3時間9分という長時間作品で
集中力が持つかなと思っていましたが、
全くの杞憂に終わりました。

ナチス政権下のドイツ、戦後の東西ドイツを通して描かれる主人公クルトの人生。様々なエピソードが語られ、その積み重ねられたエピソードが縦横に絡んでゆく。

ナチス政権が行なった「強制断種政策」と「障害者安楽死政策」や、当時のドイツの医者の半分近くはナチ党員だったこと、、
当時の状況が主人公クルトの人生に様々なことを及ぼす。
旧東ドイツ、旧西ドイツで出会う様々な人々。
彼らも主人公クルトの人生に様々な糧を
与えてくれる。
長編作品だと、脚本に少しでも粗さを
感じてしまうとストーリーに入り込めなくなることがありますが、本作はエピソード一つ一つが丁寧に描かれいて、クルトと人生を一緒に歩んだ気持ちになれる。
だからこそ、3時間という長さを
感じることなく鑑賞できたのかもしれません。
そして、キャンバスに描かれる画。
自分、全く絵心が無いので絵画に対しても、好みかそうじゃないか位のことしか言えないんですが、クルトの描く画が凄く印象的で技法が素晴らしかった。

脚本の良さもありましたが、役者さんの
演技も素晴らしかった。
主人公クルトを演じたトム・シリングは
勿論のこと、医師カールを演じた
セバスチャン・コッホの威厳のある
出で立ちとその裏にある顔の表情
叔母エリザベト演じたサスキア・ローゼンタールの憂いのある美しさ
先日鑑賞した「ウルフズ・コール」に出ていた、パウラ・ベーア。叔母エリザベトとはまた違った美しさで魅了されました。

主人公の名前の“クルト”で思い出してしまったのが「僕たちは希望という名の列車に乗った」のクルト。同じ国の方の名前だからあたりまえなんですが、時代も少し重なってるかもしれないなぁ。そういえば、公園のくだりはまさに僕たちは・・だった。。
僕たちは・・のヨナスも出ています

鑑賞したあとであらすじを読んだら、実在の芸術家ゲルハルト・リヒターの半生をモデルにした作品だったと知り驚きました。
公式HPでも載っているのでそのまま書きますが、リヒターからの映画化の条件は、人物の名前は変えて、何が事実か事実でないかは、互いに絶対に明かさないこと。だったそうで更に驚き。
ゲルハルト・リヒターのことは恥ずかしながらこの時初めて知る方でしたが、作品の奥深さをも知った瞬間でした。

観たい作品が目白押しですが、出来ることならもう一度この作品はスクリーンで目にしたいです。
ティミー

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