監督が自分自身の幼少期を振り返り、故郷への愛、そして育ててくれた家政婦への愛を込めて作り上げた作品。
白黒の映像が美しい。
家の調度品、街並み、雨や水、そして光。
全てにこだわりが感じられる。
音楽は一切ない。
生活音だけをバックに淡々と描かれる日常は、まるでドキュメンタリーのようだ。
命を宿し、その命を失った主人公が、
溺れかけた雇い主の子どもを助ける。
そして、自分の胸の内を初めて吐き出すシーンは圧巻だ。
その時に、彼女を抱きしめる腕があってよかった。
あなたを愛していると言ってくれる人たちがいてよかった。
彼女はここから、また新たに歩んでいくことができるだろう。
これは、最悪最低な男たちとは正反対に、自分の人生を前向きに歩もうとする、力強い女性たちの物語でもある。
ラストシーンで、主人公は洗濯物を抱えて屋上へ続く長い階段を登っていく。
その先に、広い空と幸せな未来が見える気がした。