トニースタンプ

ROMA/ローマのトニースタンプのレビュー・感想・評価

ROMA/ローマ(2018年製作の映画)
4.2
観る人によってはネタバレだと思う人もいるかもしれないので映画を観てから読んでいただけると嬉しいです。
最初のうちはよく分からなかったのですが物語がクライマックスに近づくにつれて、それぞれの人物の境遇、この物語が伝えたいことが分かってきました。
netflixのオリジナル作品で日本での劇場公開は未定です。監督はゼロ・グラビティのアルフォンソ・キュアロンで、彼の幼少期を元に物語が描かれています。
物語は大部分が淡々と進んでいて、カメラが1人の人物に寄ったりすることがほとんどありません。劇中で登場人物がかけたとき以外、全く音楽もありません。
何故そうなっているのかというとこれは監督の幼少期の思い出を元に描かれています。つまり幼少期の彼には物事がよく分からなかったために、時代背景などはぼんやりとしか描かれていません。実際に監督がそう話しています。
しかし物語が進むにつれて主人公が実際に置かれている境遇が丸わかりになっています。
ただそれもはっきりと明示されるわけではありません。主人公がどういう人たちと一緒にいるのか、何故彼女がそこで働いているのかをしっかり掴んでおかないといけません。
それにしても一体なぜ監督はこの作品を作ったのか?それは最後のクレジットで明確に分かります。
インタビューでもはっきり彼が答えているのですが、これは自分の乳母であるリボさんに向けて作られた映画です。
主人公クレオが感情をあらわにするシーンはほとんどありません。しっかり彼女の心はひどく傷つき、泣いています。
また、クレオが働く家族の母親ソフィアはたまにイライラしてクレオや子供達にその怒りをぶつけることがあります。しかしその裏にも彼女の苦しみがあります。
幼少期の監督にとってはそういったことは全くわからなかったため、この映画でその謝罪をする、という意味でもこの作品を作った様です。
最後に個人的な感想を言わせてもらうと、作品の雰囲気が「君の名前で僕を呼んで」にすごく似ていた様に見えました。
どこが似ていたかというと美しさ、繊細さです。映像がとても鮮明でモノクロだからこその美しさが出ている様な気がします。
まだまだ未熟者でモノクロ映画なんぞこれが初めてなのですが全く色彩の劣りを感じませんでした。
アカデミー賞少なくとも何個はこれが持っていくと思います。今すぐにでもNetflixに入って見て欲しい1本です!