ハマー

ROMA/ローマのハマーのレビュー・感想・評価

ROMA/ローマ(2018年製作の映画)
4.9
「ROMA…逆から読むと「amor」。
スペイン語で「愛」を意味する… キュアロン監督が
「あの時」に魂を帰した、愛と感謝と記憶の物語。
幾重にも変わる波の様な出来事を、肯定も否定もせず、
ありのままで世界を魅せる。敢えて同類の作品で例えると、
「娯楽性を極限にまで排除した この世界の片隅に in ROMA」

PG15
まずは賛辞を…賛辞を贈りたいです。👏
よくぞ、このような作品製作を…と心からお礼を申し上げたい。
年齢制限対象の作品は子供に見せることが出来ないので、
実は好きな傾向ではないのですが、PG15の価値がある作品でした。

前半 :★★★★☆
後半 :★★★★★
娯楽性 :☆☆☆☆☆
芸術性 :★★★★★
愛 :★★★★★
感謝 :★★★★★
この世界 :★★★★★

監督賞:納得
撮影賞:納得。なぜ撮影賞がとれたのか…を考えるとこの作品を楽しく見れる要因となります。
外国語映画賞:納得。

この作品を、アカデミー賞受賞させたい!!という気持ちがヒシヒシと伝わります。
僕からは更に、録音賞と編集賞、
更には主演/助演/男女含めて、町の人全てに賞を…
ROMAそのものに賞を捧げたいと心から思いました。
「女王陛下のお気に入り」と同じ最多ノミネート。
今回アカデミー作品は、最多ノミネート作品が自分には合ってました。

娯楽性を排除しているので、一般受けは絶望的です。笑
ただ映画評論家がめちゃめちゃ好きそうな映画。とだけは書いておきます。

ネタバレにならない隠れた面白さとしては、
映画館で、最初の配給会社の紹介で「NETFLIX FILES」と出たときは衝撃だった。
映画館としては、ちょっとした敵でもあるネット映像サービスが、
敵である映画館に堂々と名前が出る…
映画業界と同等に対抗できる日は近い…という新風を感じた。

ちなみに音(空気感)は最高でしたので、映画館で観るべき作品です。👏

観ている30分くらいは、一体何の映画なのか分からない状況でした。
主人公はいてるのですが、
何せ、主人公の起承転結の起が、起としてとらえてよいのものなのか…。
主張したい、伝えたい、主人公のストーリーはあるにしても、
他の要素が強すぎて、主人公だけの物語を伝えるには、
あまりにも複雑な構成と単調な日常が繰り返されるという
主人公を主張している映画にしては、
アプローチが複雑すぎた映画だったためです。

この映画に関しては、
「この世界」を肯定も否定もせず、あるがままに映しています。

鑑賞後、誰かと一緒にいたくなる映画でした。
独り者なので、風呂に入って暖まることにしました。🤣

それにしても、パンフレット欲しかった〜😭(やっぱり無かった…)

※これ以降はネタバレ感想、箇条書きで。
(この映画はどのように捉えても全て正解です。
楽しめる要点の解釈として、参考にしていただければ…)












・犬の糞を踏む演出に「現実からは逃げれられない」という暗示を披露。

・父親の車の中は高級感で漂わせているが、その外側はけち臭くウンコも踏む。
「自分の世界さえ良ければそれでよい。」という父親に一癖ありを暗示させる。

・引きのパンショットで、主人公を横方向に追いかける。
画面の占める割合は、主人公1割。他、世界。
追いかけつつ、しっかりROMA(=世界)を撮っている。
後半になればなるほど、このパンショットが生きてくる。
世界の撮り方は、「この世界の片隅に」と同じ匂いを感じさせる作品。

・クレオの元カレ(フェルミン)が、残りコーラを飲む。
どれだけ貧しい生活がされていたのか、1970年代のメキシコ、
政府軍の支援組織である武装集団ロス・アルコネスが背景にある。

・棒術を披露する元カレ、上半身も下半身も棒をブンブン丸。🤣
その様はミケランジェロの彫刻が動き出したかのような滑稽さと妖艶さを披露。
(なお、性格はクズ役。クズ役に徹したホルヘ・アントニオ・ゲレーロに拍手を…
彼の米国ピザの話を調べると、今のトランプ政権とメキシコの壁問題にも直結する背景もあり。)

・元カレの教祖様が謎ポーズを伝授。あれが出来るクレオというのは、
ギャグ要素もありながら、あの集団には、「あのポーズができないサクラ」が
紛れ込んでいると考察。できないことによる
「教祖様、やっぱりすごい」という洗脳行為であるという考察も可能。

・とてもきれいな白黒映画。とても繊細で美しい。
白い炎がこの世のものと思えないほど美しい。
ちなみにカメラはAlexa65。(スターウォーズで使われてたカメラ)
1日レンタル、(カメラのみ)36万円!!
(俺の月給より高いわww)

・映画「宇宙からの脱出」シーンは、ゼログラビティのオマージュ元。

・想像上の怪物クランプスが歌う歌は、監督が故郷を思う歌。
それは言葉で表すのではなく、心での表現。だからこそ歌に字幕を付けない。
(ノルウェーの民謡、国歌だそうです。ちなみに歌っている人は、現役大学教授)

・カメラ上に映る世界は、ありのままに。
何の説明もなく、その辺にいるアヒルがセックスしている。鳥も犬の存在する。
「人間賛歌」だけではなく「世界」自身を魅せるテクニック。

・個と世界がシンクロしたとき、(=デモ)個の無力さを大胆に魅せる。
あの時の拳銃は、子供を殺したのと同じ。

・テレサが、病院の受付に家政婦のクレオの身分を何も説明できず、
泣くシーンは心が締め付けられる。

・出産シーンの医者の手際の良さ。子供を無駄無い動きでタオルを巻く…
素晴らしい技術であるとともに、冷酷で残酷でもある。
(出産シーンの医者役の方は、実際のお医者さん達。どおりで)

・子供を失った子供たちが喜んで、「一緒に旅行に行こう。」と
誘うシーンが、とても暖かいな光を感じる。

・波…泳げないクレオ。それでも助けに行くクレオ。
どこにでも危険はあり。どこにでも安全はある。
これは自殺か…これは懺悔か…これは救世主か…
後光が差し込むクレオに息をのむ。
左から右へのパンショットが今までと同じで、スロー。
その先に子供たちが…
「カメラさんもっと右ぃ~、もっと!!」と久しぶりに感情を揺さぶられ、
劇場で体が悶えていた。(隣にお客さんいなくてホント良かった…)

・救助後のクレオが放つ言葉。ここには答えは無い。
その逆のセリフを言ってもこのシーンは成り立ってしまう。
しかし、そのセリフだからこそ、逆の感動がある。
「うん…。うん…。」と言葉を受け止めることに必死だった自分がそこにいた。

・どんなに時がたっても、飛行機は空を飛んでいる…。世界は回る…。
世界はそのままである象徴。


以下の話がとてもよかったので、引用します。
(監督の思いやりも好き。)

「リボは現場に何度か来た。
とても奇妙で、多分僕がこの映画作りは想像したより複雑なものだと認識した日だ。
クレオが(雇い主)ソフィアに『妊娠した』と伝えるシーンを撮影していて、
テイクの合間に見に行くと、彼女は泣いていた。
動揺させてしまったならこのシーンは完全に削除して、
違うものにするよと言ったんだが、彼女は『いいえ!』って。
彼女が泣いていたのは、子供たち(つまりかつての監督たち)が置かれた状況を心配し、
彼らを想って心を痛めていたからだったんだ。
彼女はそういう人。
いつでも自分のことは後回しで、他の人のことを思いやるんだ」。
そんなリボの精神は、クレオという形を取ってしっかりとスクリーンに刻まれている。
ハマー

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