朝田

冬時間のパリの朝田のレビュー・感想・評価

冬時間のパリ(2018年製作の映画)
3.7
ほぼ全編会話シーンだけが紡がれていく、極めてミニマルな構造。その何気ない会話の中から登場人物たちの過去や内面をじっくりと表出させていく。会話劇でありながら、現代社会のシステムに囚われた人々を描くある種の風刺劇としても成立させている。基本的には会話劇なので人物の表情を捉えたシンプルな切り返しが積み重なってゆくが、ドキュメンタリー風に手ブレのする画面や、クローズアップ、急激なパンなどが要所要所で挟まれる事で画面における単調さを巧妙に避けている。また、省略が全編に渡って利いている。アランが部屋で子供を抱えて寝室へ連れていくカットから、すぐにレオナールが自室のドアを開けるカットへと移行する。というような食い気味と言って良い編集のリズムが続いていくため、極めて軽快なテンポを持続させている。演出も巧み。全編が大量の言葉で空間を埋めつくすからこそ、時折訪れる沈黙が、スコアをほとんど用いていないのも相まって生々しい緊張感を与えている。このような極端にミニマルな構造でも飽きさせないアサイヤスの卓越した演出を存分に堪能できる。傑作にしてあまりにストイックな怪作。
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