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ジャングル・クルーズのYOUのレビュー・感想・評価

ジャングル・クルーズ(2020年製作の映画)
3.7
ジャウム・コレット=セラが監督を務めた、2021年公開のアクション・アドベンチャー。
ディズニーランドの人気アトラクション「ジャングル・クルーズ」の実写映画化である本作は、主演のドウェイン・ジョンソンが製作にも携わっているそうです。まず特筆すべきなのは、監督に抜擢されたのがまさかのジャウム・コレット=セラ!異色のホラー映画『エスター』で頭角を現すと、リーアム・ニーソンを主演に迎え4作ものアクション映画を手掛けたセラ監督、当然本作は彼のフィルモグラフィ上でもズバ抜けて陽気でキャッチーな作品となっており、私も企画が発表された時点ではかなり驚いていました。しかしいざ蓋を開けてみると、本作はこれまでのキャリアとも通ずる彼の”適応能力の高さ”が伺える一作でした。彼は過去にも、『エスター』で印象的だったニューロテック・スリラー要素を次回作『アンノウン』ではまるごとアクション映画に置き換えたり、『ロスト・バケーション』ではサバイバル映画に変換してみたりと、ジャンルやパターンによって自分の資質をその都度適応させてきており、言い換えると彼は「土俵は変わってもブレない確かな腕がある」のだと思います。その為今回も最低限の演出で世界観やキャラクターを構築していく手腕を買われたのではないでしょうか。実際本作では序盤の数分だけで「この作品はライド型アトラクションが元になっている」という事をメタ的なセルフパロディも込みでスマートに語って見せていますし、要所要所で彼の「職人監督としての腕前」が再確認出来ます。また本作はセラ監督にとって初の超大作となりますが、アドベンチャー映画に欠かせないスリルやライド感もキチンと押さえられていますし、後半以降どんどん加速していくスペクタクルな見せ場をクルーズ気分で体感する意味でも、これはやはり劇場で観てナンボな作品だと思います。

劇中ではメインキャラクターの一人マクレガーがゲイに設定されていたり、女性族長の部族が登場したりと、1916年当時のイギリスの男性優位社会や階級制度を対比させるように描写されています。本作は前述したメタ視点からも作品全体が一種の”アトラクション”として演出されている為、序盤と終盤にだけ登場する”現実”は言うまでもなく今の社会そのものであり、彼らがその現実へと出向いていくラストはハッピーエンドでありながらも若干の苦さや寂しさも感じさせる幕引きでした。ただ気になる部分も無くはないですし、中盤からは少しダレるような印象を受けたりもしましたが、ここで何より効いてくるのがロック様の存在感!初登場シーンからして彼の人柄や陽気なスタンスが作品にも表れていますし、観終わった後ではロック様以外考えられない最高のハマりっぷりです。あと今回はエミリー・ブラントが非常に好印象でした。彼女の代表作ってどれも重苦しい印象があったのですが、今回は彼女のキャリアで一際目立っていた『メリー・ポピンズ リターンズ』以上の好演を見せていると思います。何でもこれは当初出演の承諾を渋っていた彼女に対してロック様が直々に頼み込んだことで実現したとのこと。ロック様さすが!こういう陽性でバカ真面目な役柄を演じるエミリー・ブラントももっともっと見てみたくなりました!セラ監督がメジャーに躍り出た勝負作としても、ロック様×ブラント主演の娯楽超大作としても、個人的にはかなり楽しめた一作です。




























































































































セラ監督とロック様は、DCコミックスのヒーロー・シャザムの宿敵を主人公としたダークヒーロー映画『Black Adam』で再びタッグを組むことが決定しているそう。人選といい題材といい、いやピッタリでしょ。ホラー、スリラー、アクション、パニック、ファミリーとこれまで段階を踏んで来たセラ、何ならこれらは『Black Adam』に向けた前哨戦ではないのか!おいセラよ!またしばらくは死ねないなぁ。
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