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ラストレターのjohnのレビュー・感想・評価

ラストレター(2020年製作の映画)
3.9
透明感がすごい。

岩井俊二監督の故郷である宮城県を舞台に、監督の原体験も入れたタイムカプセル的な映画。ファンタジー要素は少ないが、監督が初期に製作したLove Letterに通ずるところがあるのが嬉しい(当時主演を務めた中山美穂も出演)。

デビュー作以降筆が進まない小説家が通った高校の同窓会に行き、ひょんな勘違いから物語は動き出す。
好きだった人との文通という淡いテーマ設定。
昔書いた小説、卒業アルバム、高校、図書館、同窓会の会場、実家、などおなじみのセットのなかで、親と子、夫婦、兄弟・姉妹、など家族の中で細分化された人間関係の描写を丁寧に描き、恋文を軸にしながら静かで優しい管楽器、弦楽器、ピアノの岩井流クラシカルな旋律と共に話は進み、じんわりと余韻を残しながら幕は閉じる。
近い友人の一通の昔の恋文を読んだような感覚になる。
とにかく声が良い、ノスタルジックな心情描写に溶け込む役者を揃え、文を読みながら、観る人を耳から癒していく。そんな映画。エヴァンゲリオンシリーズで有名な庵野監督の配役が絶妙だった。
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