乳酸菌

ラストレターの乳酸菌のレビュー・感想・評価

ラストレター(2020年製作の映画)
4.7
このご時世に敢えて手書きの手紙のやり取り、しかしそれがとてもエモーショナルに「映画だから」許されるご都合主義なんて野暮な事は言いたくなくなる、そして大人にとって過去を美化したと言うのもまたそんなくだらないツッコミもしたくなくなる、良質のファンタジー作品に仕上がっていました。

個々の登場人物がやらかす、ちょっとした悪戯がとても良いエッセンス。

鑑賞者は「えー!そんな事して罪悪感は無いんかね?」と違を唱える気持ちにもなりますが、なのでそれは「映画的演出」な訳であり、再び突っ込みは野暮で。

以前岩井俊二のがEテレで映画の制作手法のディスカッションをやっていた番組があったので、それと重ねて観て「ここはこんな意味でこのアングルと役者の演技は云々」な見方をしていましたが、クライマックス近辺は「あ、コレは感情移入したら泣いちゃうわ」と意図的に「ここで小林武史の音楽が来たか」と気持ちを逸らしたりして。しかしそれは何かもったいない観方でもありますが。

1人目の手紙への悪戯、2人目3人目4人目と、みんなやっちゃって、それって道義的にどうなのよ?と思ったりもしますが、それはファンタジーということで自分を納得させて、それ自身も許容範囲内だし、納得させる行為自体は許せる、むしろその予定調和に感情移入し易いモノがこの作品にはあるかなと。

冒頭のさりげないあのアイテムがラスト収束して本当の「ラストレター」になる脚本が美しかったです。

好きな人に渡してたと思っていたら渡されてなくて、後悔は幾らでも出来る、でも前に進まなきゃね!なんてポジティブな思考に辟易して斜に構えている自分とっては美しかった過去を回想して引きずって、でも生きていく、そんな彼らが決して今は幸福でもないけど、割り切って生きていく姿に深く感情移入してしまいました。

岩井俊二監督の作品としてベストな映画な出来具合でした、とっても心が満たされた、そんな気分に。
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