ボブおじさん

スネーク・アイズのボブおじさんのレビュー・感想・評価

スネーク・アイズ(1998年製作の映画)
3.5
その巧みな映像手法により、かつてはヒッチコックの後継者とも呼ばれ、1976年の「キャリー」から「殺しのドレス」「スカーフェイス」「アンタッチャブル」など数多くのヒット作を手掛け、1996年の「ミッション:インポッシブル」の成功で天下を掴んだかに見えたブライアン・デ・パルマ監督の〝終わりの始まり〟となった映画。

迫るハリケーン、1万4000人もの観客が詰めかけたスタジアムなど、スリリングかつエキサイティングな舞台設定は良かったのだが、肝心の脚本が上手くない😢

ボクシングの世界ヘビー級タイトルマッチでのギャンブル絡みの八百長とその試合を観戦中だった国防長官の狙撃事件という極上のサスペンス設定にもかかわらず、安っぽい友情と薄っぺらい恋愛を絡めたことによりB級サスペンスへと成り下がった。

話題となった冒頭13分の長回しを複数の視点からリプレイして全容を明らかにする手法は、惹きつけられはしたが、物語の推進力になっているとは言い難く、ホテルの複数の客室を上空から俯瞰して見せたり、事件の複数視点の2分割映像などの演出や撮影技法も手段が目的化(それがやりたかっただけでしょ的な)してしまっている様にも見えてしまう。

更に〝汚職まみれで不倫中〟の小悪党のお喋り刑事が、突然正義感に駆られた経緯もよくわからず、この主人公(ニコラス・ケイジ)がどうにも好きになれなかった。

同じB級刑事が、大事件に巻き込まれていく映画でも「ダイ・ハード」が、奮闘する主人公(ブルース・ウィリス)に徐々に感情移入していくのとは対照的だ。

個人的にはこの後作られた「ファム・ファタール」や「パッション」も嫌いな作品ではないのだが、残念ながらこの作品を境にデ・パルマの評価は右肩下がりとなってしまった。