あやな

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語のあやなのレビュー・感想・評価

4.1
多分賛否両論だと思うけど、私はお見事なアダプテーションだと思う。
まず巡礼ごっこから始まらない時点でびっくりなんだけど、冒頭の出版社から飛び出したジョーの走り方が生き生きとしていてそれだけで泣けてきた。
四姉妹の描き方が結構面白い。
メグはしっかり者で第二の母の役割を担わされがちだけど、結構ドレス好きなのよね、あの子。しっかり者エピソードよりちょっと贅沢して着飾りたいあたし、を出したのはすごく良い。あの子は頑張り屋さんだけどそこまで良妻賢母キャラじゃない。
エイミーは一番びっくり。嫌われ者のイメージが強いけど、おませで芯が強くて挫折も経験している1人の人間として魅力的に描いてる。
ベスは私の最推しなんだけど、もう相変わらず思慮深くて流石でした。ピアノを弾く前にハンナの後ろに隠れちゃうところとか、お爺様にピアノをいただいた時に言葉がうまく出なくて思わず抱きついてしまうところとか、全部可愛いね。メグの結婚式の準備してるのもエイミーと踊ってるのも可愛かったわ。いやぁ推しが可愛過ぎる。
ジョーは私の中のジョーより聡明で自立した部分が強調されていて少し驚き。ジョーって少女時代はもっと破天荒でガサツで意識的に女らしさを否定してる人だという認識だった。

全体としては『続若草物語』ベースで『若草物語』が回想として挿入されている形。よーく見ると実はちょこちょこ『若草物語』のエピソードをかなりの数入れていて(メインじゃないからしっかり見ないと分からないけど)、同窓会みたいな気持ちになった。全編ほぼ泣いてた。
決して現代的にするために結婚や労働や経済の話をしているわけではなく、原作がそうだから嫌な改変はあまりなかったのがガーヴィングの腕ですね。相当読み込んでると思う。
ラストに関しては絶対出てくるであろう議論を上手く収集させたな、と感心した。正直ベア先生は良い人だけどラストは期待外れだと思ってたので、私はすごく好きでした。あとこの構造の方がより"語る"行為を強化するので、映画としても力強さが出たと思う。

マーチ叔母様に限らず、実はそれぞれが呪いから完全には解放されていないし、お互いに緩やかに呪いを掛け合ってる様を無視していないのがまた素晴らしい。少女時代のシスターフッドは女性を解放してるのもまた苦い現実の一つ。色のトーンでそれを表現してるのがとても印象的だった。
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