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ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語のnaoズfirmのレビュー・感想・評価

4.3

女性の幸せとは🎬

ストーリーは自分らしく生きることを願い求めた4姉妹の選択と決意を描いた作品でした。今作の見所はやはり4姉妹です。4姉妹を演じるのはシアーシャ・ローナン、エマ・ワトソン、フローレンス・ピュー、エリザ・スカンレン、それぞれ個性的で、自然な振る舞いや空気感を見ていると本当の姉妹のように感じました。そしてカッコ良く美しいティモシー・シャラメです。今作はストーリー展開の仕方がとても印象的でした。従来の同作品だと過去→現在と時間が経過していたのに対し、今作では現在→過去→現在→過去と頻繁に入れ替わって描かれていました。

"原作"
原作はLouisa May Alcottが1868年に発表した自伝的小説で、原題は「Little Women」、続編合わせると4作があります。7本の映画化をはじめ、舞台やテレビドラマなどで扱われ、その時代の社会的な背景などの影響を受け、監督や脚本家のアレンジが加えられています。そして今作はアメリカ文学を語るうえでも外せないだけでなく、女性文学史にとっても重要な作品で実社会にも大きな影響を与えました。今作はまさに“アメリカの女性らしさ”を確立したと言っても過言ではないです。

"女性の幸せ"
今作で描きたかったのは"自分らしく生きる"ということです。結婚が女性の幸せには不可欠という考えやその考えに基づいて決められている税制上の優遇制度など未だに「結婚」と「女性」をセットにして縛り付けて考えられています。今作はまさに女性に対する“性差別”によってどれだけ多くの才能のある人たちが犠牲になったかも訴求しています。女性は家事や育児だけをしていれば良いという時代がありましたが、現代では女性の全てがそれを求めているのではありません。私たちは選択できる時代にいるのです。もちろん結婚に人生の幸せを求める女性もいますし、仕事に情熱を注ぐ人もいます。人生とは自由であり、その選択は誰かに指図されたりするものではないのです。今作でもそれぞれの幸せの形がありました。長女のメグは女優を夢見ていますが、安定した結婚を選び、貧乏でも愛する人との生活を望みました。三女のベスは病弱ですがピアノの腕は一流で貧しい人を助ける心優しい女性です。四女のエイミーは画家志望でしたが、お金持ちと結婚することを目指します。そしてジョーは小説家になることを夢見て結婚など眼中にありませんでした。4人がそれぞれ違う価値観を持っていることが今作の魅力なのです。また小説「若草物語」の作者自身は生涯結婚せずに過ごしました。小説のコピーライトを映画で描写されたように、自分自身で保有し、その印税で結婚しなくても家族を養っていけるだけの収入を得たからです。性別関係なく自分の力で自分の人生を生きている人はカッコいいです。

"男性目線"
今作は多くが女性目線で描かれていますが、同性として特に印象的だったのがメグの夫ジョンの立場です。結婚生活は貧しいもので、贅沢など以ての外でした。しかし友人と買い物に出かけたメグはとても綺麗な布地を見つけてしまい、どうしても買わずにはいられなくなり、大金を払って購入してしまいます。そしてそのことをジョンに打ち明けるのですが、その際に感極まってしまい、貧乏生活がもう耐えきれないと感情的になってしまいました。それを聞いたジョンは無駄遣いを怒るどころか、メグに貧乏生活を強いてしまっている自分のふがいなさを謝ります。このシーンは男として特に胸に刺さりました。ジョンはメグと結婚した時、愛する妻にこんな生活を送らせたいとは思っていなかったはずです。しかし現実は厳しく、思うように生活はよくなっていきません。ジョンが愛する妻が望んでいる生活を送らせてあげられないという事実を突きつけられたなら、謝るしかしないでしょう。おそらく心の内は、とても傷付き、情けなさでいっぱいになっていたに違いありません。今作のテーマの一つとして女性が可能な経済活動の少なさというのがあると思いました。メグのように貧乏な現状で、この時代その現状を打開しようと妻にできることは、夫の尻をたたいてけしかけることしかありませんでした。自分で仕事についたりビジネスを起こしたりして、お金を稼ぐということはまずもって不可能です。この限られた選択肢のなかで直接的には問題を解決することができない現状にとてもストレスを感じていたことだと思います。そして、それは性差別に問題があるという考えに行きつくのはナンセンスです。自分自身で責任を感じていることに対して、奥さんから更なるプレッシャーを受けなければならないのは、かなり厳しいものがあると思います。特にジョンのようにまじめな男性であればあるほど開き直れず、ストレスを発散させられず、自分の情けなさだけを責めてしまいそうです。もちろん成功できないでいるジョンに全てとは言いませんが、何かの問題があるとも考えられます。そしてメグのようにお金に困らない生活をしたいと望んだ時、自分では何もできないというもどかしい状態におかれていたこの時代の女性として、感情に任せてジョンに本音をぶつけられても仕方なかったのでしょう。分かっていてもとても辛いシーンでした。
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