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ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語のfilmgramのレビュー・感想・評価

4.1
【劇場鑑賞/10本目(2020.06.12)】
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【作品情報】
邦題:「#ストーリーオブマイライフ」(20.06.12)
原題:「#LittleWomen」(19.12.25)
製作:アメリカ/上映時間:135分
配給:Sony Pictures
支持:評論家95%、オーディエンス92%
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【キャスト・スタッフ】
■監督#グレタガーヴィグ
⇨レディバード
■主演
●次女ジョー・マーチ/#シアーシャローナン
⇨レディバード、ふたりの女王
●セオドア・ローレンス/#ティモシーシャラメ
⇨レイニーデイインNY、君の名前で僕を呼んで
●四女エイミー/#フローレンスピュー
⇨ミッドサマー、ファイティングファミリー
●長女メグ/#エマワトソン
⇨ハリポタ、美女と野獣
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【あらすじ】
しっかり者の長女メグ、アクティブな次女ジョー、
ピアニストの三女ベス、気さくで頑固な四女エイミー、
愛情に満ちた母親らマーチ一家の中で、ジョーは
女性というだけで仕事や人生を自由に選べないことに
疑問を抱く。ジョーは幼なじみのローリーからの
求婚を断って、作家を目指す-
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【鑑賞前に知っておきたい予備知識】
●自叙伝的小説が原作
原作は1868年に出版された女性作家オルコットの小説。
南北戦争時代に力強く生きるマーチ家の四姉妹の成長を
描いたハートフルな物語は時代を超えて多くのファンに
愛され、アニメ化、ミュージカル化、映画化を実現。
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●10回ほどのリメイク
1917年,18年にモノクロ映画が作られ、有名作は33年の
キューカー監督作、初カラーとなる49年ルロイ監督作が
知名度がありました。64年には森永健次郎監督による
日本版、94年にはアームストロング監督作など
これまで10回ほどのリメイクがなされています。
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●原作との時間軸の違い
原作は、若草物語→続若草物語と四姉妹の10代半ば頃→
成長した後の物語という構成でしたが、本作では現在と
過去を交差して描く物語の展開方法を採用しています。
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【感想/ネタバレ含む】
BOP以来、三ヶ月ぶりの映画館。そして再開一発目が
本作で本当に良かった!アカデミー賞六部門に堂々の
ノミネートも納得の作品。主演のシアーシャの笑顔が
留学時代に観光学の授業でいつも横の席にきてくれた
イサベラちゃんにそっくりで上映中に私の若草物語が
回顧されてしまって一段と感慨深い作品となりました。
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原作のローリーの再現にティモシーほど適任な俳優は
存在しないんじゃないでしょうか。個人的に今作で
一番衝撃だったのは、異なる時間軸を同じ役者を起用
した点。メイク、衣装、圧巻の演技力で見事に時間の
壁を乗り越えていきましたよね!
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●照明の使い方
本作は照明をとったも見事でした。ベスが何とか一命を
取り留めて3人でお茶を飲むシーンでは、暖色系の
照明で明るい家族の印象を与えてくれましたが、次に
ジョーが階段を下りるとミセスが1人いるだけでした。
その差に照明は暗い白色に切り替わっており、過去と
同じシーンを色で変えることによって「ベスの死」を
言語化せずにうまく観客に伝えていたのです。
こうした細部まで本当に良くできていた作品でした。
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●原作にない脚色~著作権の意味~
出版社との編集長とのやり取りは原作にありません。
冒頭のジョーは自分自身の物語に自信がなく、あっさり
著作権を手放します。つまり自身の歩んだ人生に
価値がない、誰も関心を持たないと考えたからです。
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しかし、純粋な子ども達が楽しめたことをきっかけに
出版が決まります。これは自身がつまらないと思っても
誰の人生だって「価値」は確かにあるということです。
何気ない日常の連続にも他人を惹きつける何かが存在し
それらは他人に握られるものではなく、自身で人生を
主導していくからこそ「価値」が生まれる、だからこそ
自身の物語の主導権―著作権を手放さなかったのです。
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●本作の伝えたかったメッセージ
ディズニーからハリウッドまで旧来的な女性像から自立
した女性像を打ち出した作品が次々製作されています。
しかし、こうした女性像が正しいとする風潮はかえって
多様性を否定する可能性もあり、個々の価値観が尊重
されるのが理想的な表現となるはずです。
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個人の選択による様々な生き方にも「価値」があるのを
巧く体現したのが本作。ジョーは”自立した女性”や
“結婚して妻になる”という従来的な考え方に悩みます。
そこに出版社の編集長の男性が、”フィクションにおける
女性の登場人物が迎える結末は結婚か、死か”と旧来的な
価値観を押し付けましたが、ジョーは初め拒みました。
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結果的には”その通り”になりましたが決断に至る過程は
自身で導き出したものであって、決して強要されたもの
ではないのです。自身の考えから導かれる在り方なら
現代的でも旧来的であっても価値のあるものなんだと
監督の彼女が脚色した、現代へのメッセージなのです。
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