ブタブタ

恐怖の報酬 オリジナル完全版のブタブタのレビュー・感想・評価

4.5
短縮版未見。
このオリジナル版公開を知り見に行きたいと思いつつ公開が終わってしまって、そうこうするうちに何とBSで放送。
最初にこの『オリジナル完全版』を見れてよかったです。
カットされた冒頭。
教会での結婚式、新郎新婦がそれぞれの一族に囲まれ神父がお決まりの文言を唱える場面で花嫁の顔面に思い切り殴られた痣が目の周りに出来てる。
コレだけでこの一族が家父長制的女性蔑視の碌でもない連中だと分かる演出が見事。
強盗に失敗しマフィアに追われる男。
不正取り引きがバレて逃げる銀行家。
その他殺し屋にテロリスト等などのメンバーが逃げた果ての、この世の掃き溜めみたいな軍政下の南米某国のタコ部屋からの逆転と脱出の賭けに挑む。
前半部の極限迄台詞を無くしたそれぞれがどういう理由でこんな境遇になったを見せるエピソードは、ドキュメンタリータッチ、ネオリアリズモというか派手な演出を抑えて只管淡々と、それでいていきなり呆気なく人がゴミのように死んだり、そして脱出した後の南米でもそこは劣悪な環境の殆ど地獄みたいな生活とこの辺り、背景として軍事国家とゲリラの戦い、そのテロと爆発、汚職塗れの警察と虫けらの様な国民・労働者達とまるで『アルジェの戦い』の様な(擬似)ドキュメンタリー戦争映画のタッチ。
そして後半部はテロによる油田火災消火の為のニトログリセリンを二台のトラックでジャングルの悪路を運搬する地獄行が始まる。
ボロボロのトラックを修理するシーンや、ラスト近くのドミンゲスが運転しながら現実と幻想の境を彷徨う様な幻想的なシーン等、前者は『マッドマックス2』後者は『マッドマックス』に矢張り影響与えてると思う。
トラック二号機「ソーサラー」のまるで牙が生えてるみたいな車体前部のバンパーとか、あのトラックのデザインはBD(コミック)アーティストのフィリップ・ドリュイエによる物だと知りました。
だからあんな怪物的でおどろおどろしいデザイン何ですね。
ならドミンゲスが乗るトラック一号機もあんなデザインにして欲しかった。
それと運転しながら携帯見るのは絶対にダメですが腕時計見るのもダメ(笑)
絶対にあーなると思った(笑)
只管ハードで緊張感に満ち、最後の最後の迄気を抜けないギリギリと神経を締め上げる様な映画。
こういう映画って大抵「現地のガイド」とかいって女性しかも何故か若いお姉ちゃんがメンバーに入ったりするけど本作ではいっさいそんな甘い描写はない。
ラスト、店の掃除婦のおばさん(このおばさんがとても魅力的である)とダンスと踊るドミンゲス。
『アンダルシアに憧れて』の「薄れていく意識の中、俺はカルメンと踊った」の一節が思い出された。
『短縮版』にはないらしい、この『完全版』の真のラスト。
あの後ドミンゲスはきっと薄れていく意識の中で掃除婦のおばさんと踊りながら楽園へと旅立ったのだと思う。
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