泳法違反

恐怖の報酬 オリジナル完全版の泳法違反のネタバレレビュー・内容・結末

2.5

このレビューはネタバレを含みます

残念ながらクルーゾーのオリジナル版がいかにすごいかと,「フリードキンはやっぱり『エクソシスト』」ということを確認できる作品だった。
冒頭,ニトロの運び屋になる4人が南米某国に流れ着くまでの背景が映されるが,いかんせん一人当たりの尺が短すぎ,さして各人に感情移入する足しにならない。わざわざ各国で大がかりなロケを敢行する意味があったか疑問だ。その上,殺し屋だけは紹介シーンが極端に短く,他の3人と違って本国にいられなくなる事情がわからない。殺し屋をドミンゲスの追っ手と思わせるミスリードのためだと思われるが,それとて作品にほとんどスリルを添加していないし,彼のみ命を賭ける切実な動機がないため,ドライバーを引き受けるのがいかにも唐突で不自然だ。
トラックを待ち受ける障害も今一つ。オリジナル版はニトロに振動を与えそうな危険に焦点を絞ることで,手に汗握る緊張感があった。フリードキン版は倒れた巨木が道を塞いでいるとか,爆発のハラハラドキドキに関係ないし,極めて凡庸な印象しか与えない。
主人公が命を落とす展開も甚だしく劣化している。オリジナル版は往路に極度の緊張感を強いられて走った同じ道を,復路で爆発物を降ろした解放感から軽快に蛇行し,ハンドルを切り損ねてしまうというラストにやりきれないアイロニーがあった。一方,本作はドミンゲスが敵対マフィアの追っ手に撃たれるという,ニトロのもたらす緊張と解放とは全く関係ない原因による最期で,正直呆れてしまった。
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