アンダーシャフト

恐怖の報酬 オリジナル完全版のアンダーシャフトのレビュー・感想・評価

4.0
H▪G▪クルーゾー版を観たのは、ずいぶん昔のことだ。今では断片しか記憶にない。

そして、今回のこの作品。
監督のウィリアム▪フリードキンも言っているように、一本のオリジナル作品として鑑賞してみた。

南米の森林地帯。地元の人間に混じって、ならず者や流れ者が暮らす小さな街。
ある日、そこから300キロ余り奥地の原油採掘現場で大規模な火災が発生。
通常の消化作業では鎮火は無理と判断した石油会社の責任者は、爆破によって消火することを決定し、一番近い街から爆薬を運ぼうとする。
しかし、その爆薬はわずかな衝撃で爆発するニトロ。この無謀なミッションに、高額報酬目当ての訳あり男4人が選ばれ、ニトロを積んだボロトラック2台で、ジャングルの奥地、300キロ先の火災現場へと出発する…

目につくのは、切れ目ない緊迫感を生み出すドキュメント風の画作り。
ジャングルをかき分け進むシーン、爆破のシーン、崖っぷちをトラックのタイヤがギリギリ通るシーン…カメラはその度小刻みに揺れる。この安定しない荒いカメラワークが、観る側がその場にいるようなリアル感を生み出している。

ストーリーも、主人公たちに立ちはだかる数々の困難がメインではない。一つの困難をクリアした後次に何が起こるのか、緊張と疲労と死の恐怖がない交ぜになりながら、それでも前に進まなければならない絶望とのせめぎ合いが、一番の見所だろう。
どしゃ降りの中、ガタガタの吊り橋を車体を傾げながら進むトラックのフロントグリルが、歯を食い縛っているように見えたのが印象的だった。

希望や未来とは縁遠い南米の密林で、自前でメンテしたボロボロのトラックにニトロを積み、4人の男たちは命懸けで何を見ていたのか。そこは、深くは語られてはいない。多額な報酬で手に入る未来を追った男たちの顛末は、ぜひご自身で観て頂きたい。一見の価値は十分にある。

これを観て、今度、H▪G▪クルーゾー版を何としても観たいと思った。