荒野の狼

ラ・ポワント・クールトの荒野の狼のレビュー・感想・評価

ラ・ポワント・クールト(1955年製作の映画)
5.0
動くものをどうやって撮ってやろうかとの気概溢れる、傑作ヴァルダムービー。あえて「ムービー」と呼びたい。写真家でもあった彼女は、ここで写真とムービーの違いを如何なく追求する。フレーミングとアングル、そして奥行きはすでに写真で手中に収めている。
ではムービーをどう撮るか、どう撮ってやろうか、繰り返して言うが見どころはまさにそこにある。ストーリーラインはさておき、とにかく地味に動き(ムーブ)のオンパレードである。耳の不自由な人が、唇の動きで言葉を読むように、この作品は動きそのものから生とその時間を眼で読む活動写真である。生物は死ねば動かない。では、生命のないモノであるはずの干された洗濯物や草や波はなぜ動くのか、映画の中では生き(演じ)ているのである。生きているヒトは歌い泣く、生きている猫も鳴く。ではなぜ生命のない風は吹き、舟は軋むのか。生き(演じ)ているのである、これはそういう「活動写真」である。そしてそれは映画の基本中の基本である。だから面白いといった映画ではない。そういった種類のお楽しみはヌーベルバーグに任せておけばいい。
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