Iri17

映画 賭ケグルイのIri17のレビュー・感想・評価

映画 賭ケグルイ(2019年製作の映画)
4.7
ドラマ版を観ていて「なんでこんな素晴らしいドラマをゴールデンにやらないんだ!?バカなのか?バカなのか?」と思っていて、映画版もかなりハードルを上げて行ったのですが、見事に超えてきました。

この学校のギャンブルは命の賭け合い、すなわちギャンブル=戦争として機能している。

ジョージ・オーウェルの小説『1984』の「戦争は平和である 自由は屈従である 無知は力である」の標語にあるように、この学校は生徒会が絶対的な権力と権威を持ち、その権威のもとでギャンブルに強い者が弱い者は支配するという支配構造が形成されており、ほぼ全ての者がその構造を支持しているのである。

生徒会長の持つカリスマ性と娯楽を求める性格によって開催されるギャンブル大会が開催され、その中で奴隷階層(『1984』におけるプロレ)の組織が選択を迫られる。
戦うか、屈するか。
これはマルクス以降に見られる労働者階級のブルジョワジーへの反抗と似た構造と似ているが、その時常に問題となるのは一枚岩には決してなれないということである。
ネタバレは避けたいので、この問題がどのような結末になるかは明言を避けるが、この映画は政治哲学的に読み解くことも可能な深みを持っているということである。

浜辺美波演じる蛇喰夢子というキャラクターが明らかに狂った人間であり、天使的かつ悪魔的な二面性を有した存在であることはとても興味深い。確実にヒーローとしては描かれていないこの人物の魅力が周りの人間たちも、さらには我々観客をも惑わせてしまう。
ただ座っているだけで存在感を放つ池田エライザと共に、大衆がいかにカリスマに弱いかという衆愚政治的な面も感じさせるため、少々怖い映画になっていると言えるだろう。

普通に浜辺美波や松田るかや福原遥が可愛く、池田エライザや乃木坂たちも良いので、そんな感じで気楽に観てもとても楽しめると思う。

原作は未読なので映画と漫画がどこまで似た性質を持っているのかは分からないが、この映画は近年に稀に観る漫画実写の傑作。続編の制作にも期待したい。
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