愚民

37セカンズの愚民のレビュー・感想・評価

37セカンズ(2019年製作の映画)
3.1
まず素晴らしい作品だと思ったし、こういったコンセプチュアルな作品が海外で評価された事も素晴らしいと思う。

監督は主人公が障害者じゃなくても成り立つ物語、と話していたが、当事者性が与える強度がこの作品を補完してる部分もあるので、ストーリーテリング的にはそうかも知れないが、健常者が主人公だった場合、全く違った感動だったと思う。

物語の展開としては、フィクションめいていて、その虚構的な部分と当事者がスクリーンの中にまざまざと映し出されている(見せられている)リアルとの乖離がより映画らしさ的なことを感じた。

また、この映画の芯になる主人公ユマの体当たりな芝居については、感服するばかり。
芝居をする、あのセリフを言うという選択をしたその背景にある蓄積された質量みたいなものを感じた。

大東さんの立ち位置が優しすぎるようにも見えるけど、その役をナチュラルに演じているのも見事で、大東さん史上1番良かったのでは?

因みに介護士の人に取材をした事があるけど、我々介護が身近にない人にとって、優しいと思える行動は介護士にとっては当たり前というような感覚だったので、大東さんの役が妙にリアルに見えた。

カメラを止めるなとかも良いけど、目下の映画産業市場にとってはエンタメ商業映画も必要だけど、何よりこういう存在意義がある映画が日本で公開される事が1番大事な気がしたし、それによって勇気づけられた気がした。
愚民

愚民