紅蓮亭血飛沫

エリザベス∞エクスペリメントの紅蓮亭血飛沫のネタバレレビュー・内容・結末

1.8

このレビューはネタバレを含みます

主人公・エリザベスは天才生物学者・ヘンリーと結婚し、クレアとオリバーという使用人2人と暮らす郊外の豪邸に連れて行かれ、そこで暮らすことに。
しかし、ヘンリーから「入ってはいけない」と警告された部屋に、好奇心から真夜中に侵入してしまったエリザベスは、その部屋に“もう一人の自分”が眠っている事を知ってしまう。
それを察知したヘンリーはエリザベスを殺害。
6週間後、別のエリザベスがヘンリーと結婚し、郊外の豪邸へ。
ヘンリーの目的とは何なのか、もう一人のエリザベスの運命は・・・。

本作は“クローン人間”を題材にしており、そのクローンを巡る人間の狂気が際立つ作品となっていました。
画面を二分割して同時に描かれる逃走劇、どこか異様な雰囲気が終始持続されている手腕であったりと画作りは悪く無かったです。
では肝心のストーリー構成や中身はというと、特段してのめり込んだというわけでもなく・・・。
エリザベスのクローンを殺害していたヘンリーの真意は、エリザベスの容姿は既に亡くなったヘンリーの妻を模したもので、その悲しみを埋め合わせるためにクローン生産に取り組むも上手く行かなかった(記憶や会話が曖昧でろくに生活を送れない、もって数日の命)日々が続き、精神が病んでしまったために殺害に及んだ・・・というものでした。

亡くなった妻との新婚生活を何度でも味わいたい、そしてその妻を自らの手で殺害する事で妻が生きていた実感を得たい・・・という趣旨だったわけです。
“クローン”である以上、いくらでも生産できるでしょうからその度に殺してしまっても問題ない、という思考に行き着いてしまったのでしょう。
クローン技術に注目が集まるこのご時世、いくらでも生産出来るからこそ自分の欲を満たす為に殺してしまってもいいんだ、という結論に届いてしまったヘンリーには恐怖を覚えてしまいますが、僅かなれどその気持ちが分からないわけでもないのがもっと恐ろしいです。
同じようなテーマなら、マイケル・ベイ監督が手がけた“人類の為に生み出されたクローンが、自分達の生存をかけて必死に戦う作品・アイランド”に通ずるものがありますね。

クローンという設定を巡る人類の狂気的な思考、自体は悪くなかったのですが、それ以外の要素や展開自体はこれといって見入られるものもなかったのが惜しい。
例えば使用人・オリバーが終盤で彼の胸の内を曝け出すわけですが、彼の正体が明かされた瞬間もこれといった劇薬になるわけでもないのです。
「・・・そう」と言いたくなるぐらいのなんとも思えない種明かしだったのが目立ってしまっている、ドラマ通してその種明かしを際立たせる段階を踏んでいないのです。
というか、盲目という設定なのにライフル持ち出してエリザベスの前にいる刑事を撃ち殺したり、エリザベスと一緒にヘンリーの死体を動かしたりしてるのでその設定を守っているように感じられなかったんですよね・・・。

更に、このエリザベス クローンは6体しか作られておらず、本編通して最後の6体目までが目覚める事となるのですが、ではヘンリーはその6体目を殺害した後はどうするつもりだったのか、という疑問が浮上する事になります。
ヘンリーとクレアの研究で6体目まで作った、と明言されていたわけなので、6体目以降作るのは限界と言いたげな節があったため、6人目を殺害した後のヘンリーはどうするつもりだったのか…という謎が残ってしまう…。

ヘンリーの真意、クローン技術がもたらす人間の狂気は悪くなかったのですが、それ以外は正直退屈でした。
途中で眠気に襲われる事も多々あり、あまり面白くはありません・・・。