Sinamon

楽園のSinamonのレビュー・感想・評価

楽園(2019年製作の映画)
3.8
村で少女の誘拐事件があって、事件の当日に誘拐された少女と最後まで一緒にいた友達(杉咲花)と事件現場付近にいた男性(綾野剛)と村に越して来たばかりで事件の現場を目撃する男性(佐藤浩市)の3人の視点で、村の中で過ごす窮屈さが描かれた映画です。

主要人物3人の境遇がただただ切なく胸が痛くなりとても苦しくなる映画でした。

目を見張るほどの美しい田舎の景色とは裏腹に窒息しそうな程の息苦しさを感じ、村八分や異質な者への差別によって人が壊れていく様子が鮮明に描かれていてとても重い映画でした💧

人間模様の描写がまざまざと映し出されている映画で瀬々敬久監督らしい映画に仕上がっていました。

何より、綾野剛さんの演技が迫真すぎて、どんどん世界観に引き込まれてしまいました。
フィリピン人の母のもとに産まれカタコトの日本語で喋り村人から馬鹿にされ、いつもびくびく生きていく様子を演じられていて綾野剛さんはやっぱり凄い俳優さんだなぁと思いました。

村の人達から慕われ尽くしてきたのにある誤解から村八分にあって壊れていく佐藤浩市さんの目、セリフの言い回しだけで物語が膨らんでいく演技力も素晴らしかったです。

杉咲花ちゃん演じる紡は自分のせいで友達が死んでしまったとずっと苦しんで生きていかなければならない様子がひしひしと伝わってきて、杉咲花ちゃんの演技を観て素敵な女優さんだなぁと思いました。

柄本明さんは殺された孫のお爺さん役で孫の事を一時も忘れる事が出来ず杉咲花ちゃん演じる紡や豪士(綾野剛)、善次郎(佐藤浩市)を責める事で自分を納得させる演技をされていて適役だなぁと思いました。

とにかく俳優陣の演技の素晴らしさに脱帽し皆さん完璧にハマっていました。

ラスト、観ている側に委ねるカタチで終わります。

理不尽で悲しく切ない映画でしたが、ほんの微かな希望を感じられて苦しいけれど、見て良かったと思える映画でした。
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