ざか

グリーンブックのざかのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
4.5
これは良い。黒人と白人の隔たりをしっかりと知らないのが悔やまれる。

行く先々で酷い目に遭うと知りながらも差別激しいアメリカ南部の演奏ツアーを決行する黒人天才ピアニスト、ドン・シャーリー。その付き人として問題解決力を買われた白人のトニー・バレロンガ。

あらすじの第一印象で白人トニーの黒人への差別がキーになり、徐々にトニーが変わっていく映画かと思っていたが大間違い。
全くの逆。

実際は黒人ドンが持つ「白人は黒人をこう見ている。自分はこう見られている」という、実はステレオタイプな視野の狭さを持つのはドンの方だった。

確かに最初は家に来た作業員の黒人が使ったコップをこっそり捨てたりするトニーだけど、よく知らないまま要はなんとなく黒人って嫌だなぁという世の風潮に流れていただけで、トニー自身はツアー早々にドンを「気が合う」と言うくらい気にしなくなっている。

そんな乱暴で雑だけど気の良いトニーと対照的に、白人から線を引いてなおかつ同じ黒人からも自分は違うと勝手に決めつけていたのはドンの方だった。

黒人への偏見の目はあるが天才的なピアノの腕は認められている。ならばその腕前でもって差別解消をなくしていこうという目論見がドンには当初あったのかと思われる。そして何としてもそのツアーを成し遂げるためにトニーの腕を買ったんだろう、大金を出して。

案の定暴力/偏見/差別に合い、その度にトニーに助けられるドン。ただそれを「金で雇われてるからだ」と決めつけるドン。
間違っているから/気の毒で可哀想だから/納得できないから本気でトニーは怒って解決しているにも関わらず。

道中、昔のツレから「黒ナス(=黒人のことっぽい)の仕事なんかやめて、もっといい仕事を紹介してやる」とトニーが誘われているのを聴き、お金でトニーを引き止めようとするドン。
このシーンで(なるほど、これは"黒人のドンが持つ"差別への偏見が主題なんだ)と理解しました。この映画の好きなシーンです。そして雨に打たれながら心中を吐露するシーンも…

最強のふたりも白人と黒人の友情の話ですが、グリーンブックはそれぞれ立場が真逆でまた違ったテイストの良い映画だと思います。
ざか

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