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グリーンブックのmoimoiのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
5.0
予想していたより直線的な物語だったが、分断と孤独を超えて繋がるには「個として互いを見つめる」ことが大切だととシンプルに描いているように感じた。
差別の根にあるものの一つは「無知」「無教養」で、それは少しの歩み寄から連帯に変えられるのかもしれない。
心がじわじわあたたかくなり、そしてケンタッキーフライドチキンが猛烈に食べたくなった。

マハーシャラ・アリがとてつもなく美しい。
孤独を人のかたちにしたようなたたずまい。
息を殺し地に足をつけて生きようとしているのに、寄る辺がなく、どこか刹那的であやうく、その儚さに魅入られる。

対してヴィゴ・モーテンセンはインテリジェンスを徹底して封印し、孤独とは無縁のコミュニティでマチズモに従って生きる
典型的な〝根は優しいバカ〟。
どちらかというと繊細でアーティスト肌のイメージがあったので驚いた。

ピーター・ファレリーといえば思い出すのは「ミスター・ダマー」「メリーに首ったけ」。
どぎついジョークを盛り込んだコメディ作家のイメージが強いが、今回はトニーとドクの〝違い〟を微笑ましく描き、〝違い〟は分断ではなく、他者への関心と好意に繋げられるのではないか?と優しく問うているようだった。
オールドスタイルというか、シンプル過ぎると感じる点もあるが、差別による分断をステレオタイプにおさめることなく、かつ暗くなりすぎることなく軽妙なタッチで仕立てていると感じた。
この親しみやい味付けをどう見るのかは人によって異なるだろうし、賞レースでどう評価されるのかも今後きになるところではある。
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