さな

グリーンブックのさなのネタバレレビュー・内容・結末

グリーンブック(2018年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

試写会にてアカデミー賞発表前、一足先に鑑賞。作品賞受賞という先入観なしでも見応えのある作品だった。
黒人ピアニストのドクター・シャーリーと彼の運転手兼用心棒として雇われたイタリア系のトニー・リップ、コンサートツアー中の二人を描く作品。人種差別問題に焦点を当てつつ、厳しさよりもあたたかさで包み込まれる感じがした。
トニーとドクター・シャーリー、彼らは人種だけでなく生い立ち、性格までもが真逆であることが丁寧に描かれる。最初は自宅に来ていた黒人が飲んだ際に使ったグラスをゴミ箱に放り込むほど黒人に対して偏見のあったトニー。彼がドクター・シャーリーの演奏に魅せられ、ツアー中の彼との会話を通して価値観が変わっていくのだが、その様子が手に取るようにわかる。
ドン・シャーリーは差別を受けることを分かっていながらも敢えて過酷な状況下にある場所に行き、差別に屈しない冷静な姿勢を貫こうとする。それまでは暴力で物事を解決しようとしていたトニーにとって、彼の行動は最初理解し難いものであったが、彼の確固たる意志、それには暴力とは違う別の「強さ」があることに気づけたのではないかと思う。
二人が徐々に打ち解け合う中で、車内でケンタッキーのフライドチキンを食べるシーンと、トニーが妻への手紙を書くにあたってドン・シャーリーが詩的な美しい文章を提案するシーンが好き。お互いに無かった部分を知り、埋め合わせるような描写が見ていて心地良い。
ツアー終了後、クリスマス温かく迎え入れられるというハートフルなラストで締めくくられ、観ているこちらも非常に温かい気持ちになった。
「最強のふたり」と比較されることが多いようだが、随分前に観た「アラバマ物語」を思い出した。
さな

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