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グリーンブックのsanchangのネタバレレビュー・内容・結末

グリーンブック(2018年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

最高。アカデミー作品賞の予想はROMAにした。結果獲れなかったのはROMAが外国語映画でNetflixだからと悪態をついていた。けれどまったくそんなことはない。この映画が素晴らしいからだと納得。ROMAは監督個人の体験を崇高な芸術作品にまで昇華した映画。一方グリーンブックは社会問題を扱うロードムービーのコメディエンタテイメント。種類はまったく異なるけど両者ともとんでもない次元まで達している作品と思う。今年のアカデミー賞はすごいレベルの争いだったことがわかる。

まず脚本が巧み。黒人差別の問題を扱いながらもそれだけにとどまらない多層的問題を抱える登場人物のドラマを、ライトなコメディタッチで描くことで、無意味な悲観を拒否し、さらに層の厚い物語となっている。あとはマハーシャラアリとヴィゴのギブアンドテイクの関係。石ころのくだりや、手紙のくだりなど、物語の前半で積み重ねた些細な言葉のやりとりと、その応酬が後半になってキレイにつながってくる。そのスムーズさといったらもう、息を呑むほど素晴らしい。

当然俳優の演技も満点。気品と威厳を兼ね備えながらもそれを少しずつ崩していく難しいバランスを演じたマハーシャラアリ。後半につれて増えていく笑顔だけで、観客を喜ばせれる人はこの人くらいではないか。また、白人でありながらもイタリア系という純粋なアメリカ白人とは異なる立場を演じるヴィゴモーテンセン。陽気でアホでケンカっ早い、典型的なイタリア系アメリカ人の役どころながら、その圧倒的な存在感と安心感によって唯一のキャラクターを作り上げた。

非の打ち所がない映画とはこのことか。ただし、良い話すぎるという指摘があるのもわかる。しかしこの映画ほどになると、良い話でなにが悪い?もはや良い話の極地である。それゆえ置きにいってる感すら感じない。またホワイトウォッシュという批判。これもよくわからん。白人だって人種差別を問題提起したっていいじゃない。と心から思う。

とにかく数えきれないほどに良いシーンがたくさん。マハーシャラアリが手紙をチェックして褒めるシーンや、フライドチキンのシーン、そしてなによりもヴィゴの「誰かに会いたいなら自分から動かなくちゃ」という言葉に応えるマハーシャラアリのラストシーン。
映画全体のトーンはコメディ、それゆえ表情は笑っているし多幸感に溢れているのに気づいたら涙腺崩壊レベルで泣かされてる。素晴らしい映画だった。

スパイクリー、あなたはこの映画がアカデミー作品賞を受賞したことに納得がいっていないという。ブラックにしか分からない葛藤があるのだろう。もちろんそれは尊重する。しかし、ブラックが不満を抱くような作品ではないと感じたし、この作品は圧倒的に高いクオリティを提示した。
アカデミー賞に輝くこと、それは間違いなく、ドゥザライトシング!だと思った。ごめんスパイクリー、あなたのことは大好きです。
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