konoesakuta

グリーンブックのkonoesakutaのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
4.7

特筆しなければいけない絶対的なシーンが連続するわけではないのだけれども。ほんのたわいな場面場面を食い入るように観てしまったことは確か。味付けはいくらでもできそうだけれどもさらっとしている。だからどこからでもなんでも起きそうな気になってドキドキしてしまう。どこで起伏が訪れるのだろう。そこで何が起きたかはもちろんあまり書けないけど、二人が心を通わせていくという本当にシンプルなことに関しては全くもって期待を裏切らなかった。

英検3級の私はそれ以上でもそれ以下でもない。その私でも南部なまりがわかった。初めてでうれしかったしおかげでより映画の中に没頭できた。彼と彼は南部にあえて突入していくわけで。私もディープサウスに突入していく気分はばっちりだった。本当になまっていたかどうかはさておき。

手紙って。スマホとかPCとかでSNSとかウキャウキャ言ってるこの時代からみれば最高のコンテンツだよね。コンテンツ?どう考えてもこのワードは適さないか。ええっとね。でもあれは誰かが何かを誰かに伝えるために情報を集約しただけではなく、伝える側の教養も含めて発信される。肉筆で。最高の自己表現の一つでありハートを込めるには最適なものではと思う。誰でも綺麗にレイアウトできる書式ではなくて、汚ったない字で書かれた手紙からこそ拙い愛の調べを感じちゃうんでしょう。互いにかえのきかない自分たちを想像しちゃうんでしょう。いいねえ。

はっきり言っておきたいことは「黒人差別の映画ではない」ということだ。「黒人だけでなくて民族差別」も扱われる。「力が力を屈服させることへの嫌悪」や「排除している(差別している)側の事情」なども描かれるのだがこれらが主題ではないよね。この世の物語は間違いなく「誰かが何かを受け入れて変わっていく」という要素がある。ときにそれは成長でありときに退化であるかもしれない。やっぱり主題はそのあたりであって。受け入れる。垣根を超える。壁を壊す。二人ともある意味プロフェッショナルなんだろうけども、24時間べったり一緒にいたらそりゃ隠せないものも出てくるよね。いい意味で。そこをぶつけ合って、そして「そこで芽生えるもの」を描いた映画だ。黒人差別の映画じゃない。そのような諸々を背景にして描かれる二人だ。私は当たり前なことをなんでこんなに調子こいて書いているんだろう。

ジミヘンドリックスを思い出してしまった。白人でも黒人でもない孤独。これは背景ではなくて魂そのものだった。

16ブロックやスモークあたりを観たときに、終わりよければすべてよしって映画あるよなーと思った。
本作のラストもいい。本当にいい。こりゃ最高だ。しかも全く予想できなかった。終わりよければ全て良し。


って言いたいんだけれども、終わりも終わり以外も良いんよ。名作認定。


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3 15 追記

よく考えるとラストはそこまで斬新ではないよね。普通かな。でもほんわかしていて最高。