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グリーンブックのryuのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
4.2
よく指摘されるように、仏映画「最強のふたり」を観た人なら多くの共通項をこの「グリーンブック」に見出せるだろう。白人と黒人、教養も資産もかけ離れた2人が、カルチャーショックを経て確かな友情を築いていく。どちらも実話ベースだが、創作したかのように好対照な凸凹コンビだし、だからこそ奇跡的に生まれた絆が一層輝く。

ロードムービー、バディもの、喜劇、音楽といった王道のジャンルと素材に、人種問題やLGBTという社会派の味も加わり、しかもそれぞれの要素が邪魔しあうことなく、絶妙なハーモニーで口当たりの良い作品、アカデミー賞の作品賞も納得だし、ピーター・ファレリー監督の手腕も見事と言うしかない。

この映画では、音楽家で紳士、黒人差別を無くすという目的を持つ黒人シャーリーに対して、若干無頼でガサツ、日々を暮らすだけのイタリア人トニーが補えるところなど、全くないのでは、と思えるが… いや、是非観てください。
どんなことを トニーが補うのか、シャーリーに気づかせるのか。腕っぷしももちろんあるけれど、それだけではないですよ。

腕っぷしの面でのトニーはそれこそ文句なしなのだが、そこは逆にトニーや我々観客が、シャーリーに気づかされることになる。いかに私達は「差別?けしからん!ぶっ飛ばしちゃえ!」というシーンを好んで観て、そして爽快な気持ちになっていることか。そしてそれが、差別撤廃という活動の中では、いかに無駄な、逆効果なことか、を。

愛に満ちているトニーの暮らしの中でも、手紙という文字によって、さらに幸せを深めることに気づかせてくれるシャーリー。こういった全てのシーンが、押し付けではなく基本的にはコメディで語られる。あくまでも気づくのは観客である私達だという作りは、たしかにこの作品を作品賞として評価したくなる!
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