MinaMi

グリーンブックのMinaMiのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
3.5
異質であるということを深く描いた作品である。単に人種差別だとか移民問題、女性差別、性的マイノリティ(後者2つは直接的には触れていないが)を撤廃すべしというようなシンプルな話ではなく、黒の中の白、白の中の黒、他人から見た典型的な所属するであろうグループとは異なる存在としての自己に争い信念を通そうとする人達のお話だと思う。
こういうテーマは堅苦しくなりがちだが、軽妙なジョークがホッとさせてくれる。黒人ピアニスト役のアリの笑顔がいい。
一番グッときたのは旅の途中、農園で無心に働く黒人からドクがじっと見られるシーン。そこにはいじめの構造にも似た、「俺たちと同じ括りの筈なのに、俺たちと違う」という妬みと憎しみと排他的な視線を感じる。
黒人のコミュニティに馴染めない天才黒人ピアニストと、イタリア系コミュニティの典型のようなマッチョな男。でもこの典型も、観客の思い込みでしかないことは次第にわかる。
物事を紋切り型で考えることは時に役立つが、勝手なグループ分けが出来るほど人間は単純ではない。国単位、階級単位でまとまってみせても実は一枚岩ではない(Brexitもその好例の一つではないか!)。あの優しい警官だって、警官の世界では異質な変わり者なのかもしれない。
複雑きわまりない人間関係に重要なのは寛容さと非暴力、そして耐える力だと思う。60年代の南部を舞台にした勇気の物語。ピアノを弾く指がとても美しい。
それにしてもトリオのメンバーはあまりに冷たくないか?という点だけちょっと腑に落ちなかったけども笑
あと、カティーサークが飲みたくなる。

・脚本 7/10
・演技 6/10
・演出 8/10
・音楽 7/10
総合点 28/40
MinaMi

MinaMi