たなかひろき

ベル・カント とらわれのアリアのたなかひろきのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

夜の庭での密かな情事が、極限の状況下だからこその純粋さ、というか。

この状況で、立場も超えて、「ただ純粋に相手を求める」という、余計なものがひとつもない情欲の美しさみたいなものが際立っていて、いいなあと思った。

あと、物資配達してるおじさんが尊かった。
「犯人側」も「警察側」も、自分たちの「集団の利害」のために動いている一方で、あのおじさんだけ「個人の倫理」によって、身の危険を顧みず動いていたのが、人として尊い。美しい。と思った。

美しさとは、純粋さだろうか。

すべての「物語」「情」を吹き飛ばす結末が、あまりにも容赦なく、残酷で、衝撃だった……。でも、こんな結末が、世界には普通に存在している。それが現実。「宇宙はオレに興味が無い」。個人の「物語」を、世界が酌んでくれることなどない。
それを腹の底から思い知らされた人間が、それでも生きるために歌うのだろうか。

そこまで含めて、美しい映画だと思った。『エレファント』もそうだが、残酷さを内包するからこそ美しい作品、というものがある。シグルイとかハンターハンターもそうかな。
たなかひろき

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