人がじわじわと狂っていく、その狂気の中にある圧倒的な哀しみに胸が苦しくなる。
それなのに凄い力で惹きつけられて、目が離せなかった。
社会に虐げられた主人公・アーサーが悪のカリスマ・ジョーカーへと変貌していく物語。
ジョーカー役のホアキン・フェニックスのイカレっぷりが凄まじくて不安になる。
壊れているとしか思えない彼の演技に、恐れとか憤りとか、哀しみとか、孤独とか、凄い感情の熱量を感じる。
狂ったように笑うアーサーは、いつも泣いているようにしか見えなくて切なかった。
そして、だんだん現実と虚構の境目があいまいになっていく彼に、心がザワザワした。
社会に虐げられ、誰にも見てもらえず、もがいてももがいてもどこにも辿り着けぬまま悪のカリスマ〈ジョーカー〉になった彼は、それでもどこまでも孤独で、底にあるのは絶望なのだと思う。
言葉で表現するのがなんとも難しい。
胸が痛むほど悲劇的でもあり、かと思えば高揚感があって、なおかつスタイリッシュで、不思議な、でもものすごい魅力を放つ映画だった。
