あべきょ

ジョーカーのあべきょのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
3.8
実家のリビングで観ていたのだが、ジョーカーの凶行に終始ママが「怖かね〜、なんねこの人は」と言っていて、まあ普段映画を観ない人の世間一般的な感覚だとそうだよなぁと思った記憶がある。

「頭のおかしい人」として片付けてしまえばそれまでだが、ジョーカーようなヴィランが生まれ、カリスマ的に支持や共感を集めてしまう社会的背景に目を向ければ、やはり社会派映画としてもこの作品は本当に素晴らしい出来だと思う。

ホアキン・フェニックスが怪演する主人公の凶行に至るまでの過程と歪んだアイデンティティ、救いようがないほどに行き詰った現実と犯罪行為によるある種のカタルシス、、、これらの生々しさは単なるフィクションの域を超え、今の世の中で何時どこで起きてもおかしくないどころか、世界中で起きているのでは?という怖さすら感じさせる。

また、他作品との比較という意味では、『タクシー・ドライバー』を連想させる部分が随所に見られる。主人公の境遇や一方的な失恋から凶行に至るまでの過程は驚くほど似ている。部屋で独り銃を構えてポーズを取るシーンのオマージュは特に印象的だった。

時代設定は数十年離れていたこの2作品を比較すると色々面白いかもしれない。
片方はベトナム戦争帰りでアイデンティティを失った元軍人、ではジョーカーは?
似ている部分が多いけど、違う部分もある。いつの時代もこういう人は現れるのは確かだが、やはり2020年代に特有の社会背景に起因する深刻さも大いにあるような気がしている。
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