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ジョーカーのgnspのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
5.0
丸ピカ3ドルビーシネマのこけら落とし、最速上映で観賞しました。
いやー、非常に疲れた。ヘビーだ。

ジョーカーというキャラクターが何故ここまで突出して人々を惹きつける、「悪」のアイコンであり続けているのか。
言動のカリスマ性や得体の知れなさなど様々な側面があるが、
なによりも大きいのは、リアルとフィクションの狭間に位置していると思わせる「半実在性」ではないだろうか。

それを改めて強く感じさせる作品だった。

「ダークナイト」のスペクタクルも、「スーサイド・スクワッド」の祭り感もない。
あるのはただただ廃れた「生活」だけ。
しかしそれでもこの作品は、11年前のヒースのジョーカーと同じく後世に大きな影響を与えることは不可避だろう。

この作品は観賞の際に、ひとつフィルターを置いて考えなければならない。
そっくりそのまま受け止めて受容するのは、とてもじゃないけど危険すぎる。

見ておくといい作品は、とにもかくにも「キング・オブ・コメディ」。
本作へのオマージュが良い出来事も悪い出来事も。全てがふんだんに詰め込まれている。
なにより、「KoC」ではルパートとして出演したデ・ニーロが今作でジェリー側となって出演していることにこそ大きな意味がある。

そしてホアキン・フェニックス。
「表情は笑っているのに感情は悲しみを感じている」、二つの相反する感情を抱いた顔を演じるという離れ業を序盤からやってのけている。
更にそれが突き詰められていくと、もう「笑っているし表情も笑っているのに心は笑っていない」ということを、ただの「笑い」の演技だけで観客に理解させている。
あと上手すぎず下手すぎずなダンスのキレ。
本当に凄い。圧倒された。
作品賞はどうなるか分からないが、ホアキンはオスカー絶対獲る。

「笑いと哀しみは表裏一体」とはよく言ったものだが、思えば「ハングオーバー!」シリーズで世界中を笑いの渦に包み込んだトッド・フィリップス監督が、今作で世界中を悲しみへと誘うというのは、なんとよく出来た「コメディ」か。

あと触れておくべきなのは、この作品があくまで「バットマン」の派生作品であるということ。
「ジャスティス・リーグ」においても、フラッシュに「アンタのスーパーパワーは?」と聞かれて" I’m rich."と答えるのが笑いどころになるほど。
そんな「勝者」が様々なガジェットを駆使して戦うコミックヒーロー。
この作品には、そんな「ゴッサムの正義の象徴」はいない。
スカッとする「アクション・コメディ」はもちろん、「リアル志向なアクション描写」もありゃしない。
希望のない社会だからこそ、ジョーカーの思想が入り込む隙がある。


はてさて、いま我々の生きる「リアル」はどうだろう。
新たなる「道化王子」は、我々に大きな「問い」を突きつけた。



10/10:コメントにネタバレ考察追記
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