このレビューはネタバレを含みます
“笑いのツボ”という言葉がある。人それぞれに面白いと感じるものは違っていて、その差異を分かりやすく表すものだ。
だが、おおよその笑いの感性というのは属するコミュニティや文化によって形作られていくだろう。良くも悪くも、誰かと似た形を持ったツボが当人の中にあるはずだ。
だがアーサーは違った。
自身の感性がどうしようもなく“周囲”と異なり、病質的なものだと錯覚させられた。
重たげに足を階段に乗せてゆっくりと重荷を抱えて登っていく姿、黒く縁取られた笑顔。
それら全てから解放された彼の、彼にとっての喜劇の引き金は、きっと真珠の散る音をしていたのだろう。