フンボルトペンギン12号

ジョーカーのフンボルトペンギン12号のレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.3
底辺に生きる男がその底すら突き抜ける話。地獄のような映画だった。

中立な時には誰からも見向きもされなかったコメディアンが、悪の側に立った瞬間喝采を受ける様はまさにアンチヒーロー。恐ろしくもあり悲しくもあった。
悪と言っても、もともとは貧困に喘ぐ市民達で、普段の社会への不満や怒りの爆発が犯罪に走っているだけと思うとやるせなさを感じる。

主演のホアキン・フェニックスの役の作り込みが凄まじい。貧困を体現するようなガリガリな体、異様に長く見える腕、変な形の肩甲骨がとても不気味。

自分の人生が悲劇だと思っている間は長く苦しい坂を登るショットを見せ、逆に自分の人生が喜劇だと気がついたときは長い坂を下るショットを見せる。わかりやすく、いい演出だなと思う。
他人が笑ってるところで笑えず、他人が笑わないところで笑ってしまうところは共感できる(笑)