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ジョーカーの1303のレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.6
喜劇の姿を借りた悲劇 ジョーカーは常に境界の象徴として描かれてきたように感じます。
善意と悪意、秩序と混沌、不条理と道理..それぞれ両極を見据えながら試し揺さぶり一線を越えるその顛末を嘲笑う、絶対的な正義と相反する存在として機能する彼には政治思想や個人的欲求など無く破壊も暴力も殺人も何の意味も持たないため行動原理を欠く不安定さが恒久的に安定を求める私達にとって最大の脅威となり得るのです。
この作品を通しジョーカーは彼単体の呼称ではなく時代精神そのものの名前だと判る瞬間、彼自身を擁護する弁明のように感じられていた要素は全てそのまま社会が内包する疾患である事に気付かされます。
厭世的でありながら優しく崇高なのに脆く儚いというホアキンフェニックスの特異性を極限まで尖らせたキャラクターとして同調率は過去最高と言える気がします。
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