デジャブ

ジョーカーのデジャブのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.3
車が、ビルが、街が、衝突し、崩壊し、爆発する。何かが破壊される映像は本能的な破壊欲をくすぐられて美しいと感じてしまう。
この映画にはそんな物理的でダイナミックな破壊シーンはあまりない。
しかし、破壊の中でも最も美しい、人間の精神が崩壊する瞬間、その瓦礫から本物の悪が誕生する瞬間を描き、観客である我々までをも破壊しようとする。

"貧困層の醜悪な環境から生まれた同情すべき悪"なんて思う人がいるらしいけどそれは違う。
醜悪な環境を利用して自らを憐れむ気持ち良さ。偶然に触れた悪の爽快感。社会へ憎しみをぶつける興奮、高揚。
自らを、他人を、世界を破壊する快楽に溺れた、同情する余地のない完全な悪。
だからこそ美しい。誰もが本能的に持つ悪への堕落欲をジョーカーが強烈に体現してくれた。

脳内の何かが破壊される予感に、誘惑に、恐怖に、笑いが止まらなかった。