まこさん

ジョーカーのまこさんのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.3
 個人的に今年のベストワンは今のところアベンジャーズ/エンドゲームで落ち着いているわけだけれども、予告編を観てから公開が楽しみでならなかった一作が「ジョーカー」だ。
 DCコミックのバットマンに登場する宿敵として、これほど有名で曰く付きのキャラクターはそういないだろう。
 「ダークナイト」でジョーカーを演じたヒース・レジャーが役作りに没頭するあまり、不眠症になり薬物の併用摂取による急性薬物中毒で急死したのはご存知だろう。当時インフルエンザだったと言われているが、若干28歳だった。
 この演技が高く評価されて数々の賞を受賞、アカデミー助演男優賞も受賞した。残念ながら受賞したのは故人となってからだったが、この件もありジョーカーと言うキャラクターが神格化されていく。
 このダークナイトの続編「ダークナイトライジング」のプレミア上映で銃乱射事件が発生、12人が死亡し58人が負傷した。この事件の犯人がジョーカーを名乗ったの事もありジョーカーと言うキャラクターは人の心に刻まれることになる。当たり前だがアメリカではこの事件の事もありジョーカーと言うキーワードにとても敏感でナイーブであり、批判も多い。
 ヒースレジャーの死後も映画やドラマで新しい俳優がジョーカーを演じて来たわけだが、今回ほど注目を集めたジョーカーはいなかった。
 そもそもジョーカーを単独で映画にしてしまうという構想が面白いのだが、それを演じるのが個性派ホアキン・フェニックスで監督はコメディ映画「ハングオーバー」のドット・フィリップスだと言う。
 この組み合わせを聞いて「はぁ?」となった人の方が多いと思うのだけれども、僕はなんか面白そうと思ってしまった。コメディ映画の監督がシリアスな映画作ったらどうなるんだろうと興味津々だ。しかもその題材がジョーカーなら尚更。
 幾度となく描かれてきたジョーカーというキャラクターではあるものの、芯から掘り下げて描いた作品はなかったわけで、おまけにDCEUシリーズからは切り離された完全単独映画だと言うではないか。
 マーベルのMCUシリーズに負けじと対抗意識を向けるDCではあるけれども、思いのほか公をそうしていないのが現状のDC陣営。アクアマンのヒットで多少安堵しているであろうと思われるが、まだまだ元気のないDCEUシリーズにジョーカーを注ぎ込みたかったDCトップの希望を打ち崩して単独映画に仕上げてしまった、ドット・フィリップス監督の思い入れに賛同したい。そして何よりもホアキン・フェニックスのジョーカーを楽しみたいと思うのである。予告編から漂う不気味ではあるものの哀愁を感じる雰囲気にこの何ヶ月もソワソワとしてきた。
 ようやくご対面となった。

 ゴッサムのスラムで母親と二人暮らしのアーサー、ピエロを生業に母親の介護をしてギリギリの生活を送っている。
 スタンドアップのコメディアンを目指しているアーサーは病気持ちで脳と神経の病気で突然笑い出してしまう奇妙な青年。
 仕事もうまくいかず、だれにも必要とされていないと感じていた。そんなアーサーがどうやってジョーカーへと変貌していくのかというお話なのだが、時系列的にはバットマン誕生前のお話。ブルース・ウェイン(バットマン)の父と母が殺される直前を描いている。
 素晴らしいのはホアキンの演技もさることながら音楽が良い。そして階段でアーサーが踊るシーンのなんとすばらしいことか。
 この階段シーンには上りと下りのシーンがあるが、上りは微かな希望を求めている様を、下りのシーンは地獄へと落ちていく様を描いているようだ。
 物語後半の故ヒース・レジャーを彷彿とさせるシーンにグッとさせられた。意図しての事かはわからないが僕にはそう感じたし、それは彼への弔いのようでもあった。
 決してメガヒットするような内容ではないはずだが、期待をいい意味で裏切るロケットスタートで世界を圧巻している。ド派手なアクションシーンがあるわけでもなく、豪華キャスト勢揃いというわけでもないがハリウッド大作に疲れた人にもおすすめの一本だ。


https://www.youtube.com/user/0314zipzip
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