さっさー

ジョーカーのさっさーのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.3
"ずっとハッピーなのは難しい"

ダークナイトというあまりに高いハードルがあったけど、あちらのジョーカーとはちょっと本質的に異なるような。一つの解釈でありそのまま優劣付けるものでもない気がする。これってDCEUじゃないんだよね?

ダークナイトのジョーカーは価値観の破壊や世界を混沌に陥れようとする野望めいたものが表立ってたのに対し、こちらは現実への絶望が前面に出ている。
絶望がアーサーを徐々に蝕み堕ちていく。
良くも悪くも非常に人間臭い。(ちょっと悪くいえば、結構ありがちな動機だ)

真の意味での味方がいなかったジョーカーの絶望、苦しみ、諦めが最後の一言"理解できないさ"に集約されていてゾクっとした。

何度か出てくる長い階段のシーン。
散々な目にあった仕事場や同じ事しか聞かないカウンセリング、薬局…と憂鬱な「下の世界」から、唯一の安寧の家がある「上の世界」へ向かう時ですら足取りはよろよろと重い。
ジョーカーとして覚醒後、自ら「下の世界」へと足取り軽くステップしながら降りていく姿に、もう彼はアーサーではなくなったことを感じさせられる。

今回ジョーカーはフォロワーであるモブピエロ達と一切接触していない。
にも関わらず民衆はジョーカーの信念に呼応し、祭り上げ、結果的にジョーカーの力となる。
このカリスマこそがジョーカーの最大の武器だ。

ジョーカーは死なない。
いやそりゃまぁメタ的にも死なないだろうけど、仮に肉体的に死んだとしても撒いた悪の種は波及し、ジョーカーの精神は生き続ける。