ゆういち

ジョーカーのゆういちのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.2
『狂ってるのは僕か、世間か』
『笑いの仮面をかぶれ』
『理解できないよ』

久々こんな凄い作品と出会った。
ジャックニコルソンや、亡くなって伝説になったヒースレジャーが演じてきたキャラクター。常に笑みを浮かべて非情な行いをしバットマンを苦しめてきたDCを代表するヴィラン。化学溶液に入って醜くなったとか、父親に口を裂かれたとか狂気のルーツがTHE悪役だった今までと異なって、本作のホアキンが演じるアーサーは純粋で優しい男。母親を介護しながらコメディアンを夢見る普通の男。人を笑顔で幸せにさせたかった優しいアーサーがいかにしてジョーカーになるか。それがこんなにも救いがなくて悲しいストーリーだとは思ってなかった。過去に触れたシーンはあまりにも絶望。色使いやカメラワークなんかもすごく印象に残ったけどなんといってもホアキンフェニックスの演技力。直近観たゴールデンリバーやビューティフルデイでのふっくらした印象はなく骨が浮き出る痛々しい見た目。24キロ減量らしい。病、暴力、介護、解雇、出生なんかで徐々に社会的にも精神的にも居場所を失っていく複雑で難しいキャラクターを演じてて見事としか言えない。世の中で理不尽に虐げられてきた全ての人間がジョーカーになり得る。SNSなんかで簡単に怒り、憎しみなんかが発信できる時代だからこそより負のエネルギーは広がりが早いし、誰もが自分の憎しみを体現してくれるカリスマダークヒーローを待ってる。劇中印象的なダンスシーン。一人で踊ってきたアーサーが街が焼ける中、悪のカリスマジョーカーとして踊るのがカッコいい。ラストシーンを見るとどこまでが本当なのか疑問さえ浮かぶけどその謎めいたところもまた魅力なのかもしれない。
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