DaisukeYoshino

ジョーカーのDaisukeYoshinoのネタバレレビュー・内容・結末

ジョーカー(2019年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます


コミックを原作としたのが、この映画の逃げ道。それが救いでもあり、残念でもある。この作品を真っ向からリアリスティックなドラマとして捉えたとして、現代の残酷な格差社会は解を見出せないのではないのだろうか。これはコメディ、ジョーカーというキャラクターのストーリー。

誰もが理解しあえない世界でコミュニケーションとはどういったったものなのか。社会という画一性(トランプの52枚のカード、そこにすらキング、クイーン、ジャックと格差は存在するのだけれど)、そのどこにも汲みできない歪な存在(ジョーカー)が、観劇者に問いかけるのは、妄想と現実の境界線、他者との境界線、家族の境界線、善悪の境界線。我々は深く刻まれる分断という境界線からジョーカーを救うことはできるのだろうか?ジョーカーとは社会の闇。今作は原案としてのジョーカーを遥かに超えて現実社会の闇を暴き出してしまった。それはゴッサム以上に残酷な世界。これはコメディー、我々のストーリー。

デニーロ起用は明らかなタクシードライバーへのオマージュであり、結末こそ違えどトラヴィスもまたジョーカーであったのだろう。ジョーカーとは悲しく理不尽なチェーンリアクションのメタファーなのかもしれない。

ホアキンフェニックスほぼ独演かつ素晴らし過ぎる怪演に完全に持っていかれてしまった。劇中に見られるジョーカーの姿から舞踏家「大野一雄」を思い起こさせられた。白塗りも一因だけど、ジョーカーの曲線的な身体表現は氏からのインスパイアがあるんじゃないかなあ。作品全体に漂う空気感には村上春樹的な温度感を感じたり、殺しと血の描写には日本映画の美学をかんじたり、監督は日本文化への造詣が深いのではなかろうか。


いやーしかし劇中の母親の妄想とは言え、ブルースウェインとジョーカーの異母兄弟設定を持ち込んだのは胸の高鳴る展開だったなあ!!(結局明確にはしていないけど)

音楽表現がベタベタ過ぎてちょっとゲンナリでした、もすこしさりげないくらいのが私は好みです。とは言え、覚醒したジョーカーが階段で踊るシーンはとてもとても美しく、あの曲は今後DJ出かけまくる次第です。creamのwhiteroomの使い方も印象的で、once upon a time in hollywood 然りですがなんだか最近ロックと映画の関係がとてもいいですね!